第3篇「常世の森」(中編)

▢▢▢ 黒曜石の謎 ▢▢▢


異常気象の予兆に、サクヤの表情が一瞬曇くもる。


「いよいよ始まったか......」


その言葉に、光輝こうき詩織しおりは顔を見合わせた。


「始まった、というのは?」


サクヤは高台から離れ、天体観測所へと足を向ける。


「黒曜石の矢が警告を発している。この国に迫る異変を」


▢▢▢ 天体観測所 ▢▢▢


観測所の内部は、想像以上に精緻せいちな造りだった。幾重にも重なる歯車が、星々の運行を追跡するように静かに回転している。


「すごい!」タカミンが青く輝きながら宙返りする。「この機構、現代のプラネタリウムと同じ原理!でも、どうやってこんな精密な装置を?」


サクヤは中央の台座に向かい、黒曜石の矢を取り出した。漆黒の輝きを放つその矢は、まるで宇宙の深淵しんえんそのものを閉じ込めたかのようだ。


「この矢は、天空からの贈り物」


彼女は静かに語り始める。


「はるか昔、星々の力を宿した七つの矢が、この地に降り注いだ。我々の祖先は、その矢の力で天体の運行を読み解き、来たる危機に備えてきた」


▢▢▢ 迫り来る脅威 ▢▢▢


タカミンの警告音が鳴り響く。


「気圧の急激な低下!こんな変化、自然現象じゃないよ!」


サクヤは矢を掲げ、天井の開口部へと向ける。黒曜石の表面が、星空のように輝き始めた。


「見えるか?」


彼女の声が震える。


「天体の大移動が始まっている。このままでは、この国は氷の時代を迎えることになる」


詩織が火焔かえんの鏡を取り出す。


「この鏡......何か反応しています」


するとタカミンが興奮した様子で叫ぶ。


「これは!鏡と矢の波長が共鳴してる!二つを組み合わせれば、何か起こるかも!」


▢▢▢ 衛士たちの決意 ▢▢▢


常世とこよの衛士たちが次々と観測所に集まってくる。彼らの表情には、覚悟の色が浮かんでいた。


「かつて我々の祖先は、この危機を予見していた」


サクヤは部下たちに向かって宣言する。


「そして、その時には未来からの旅人が現れると」


光輝は羅針盤を握りしめる。


「私たちに、何ができるでしょうか」


サクヤは静かにうなずく。


「七つの矢の力を一つに。だが、それには」


彼女の言葉が途切れた時、天体観測所全体が大きく揺れ始めた。


▢▢▢ 次回予告 ▢▢▢


衛士たちとの共闘。


七つの矢の秘められた力。


そして、日高見国の運命を賭けた戦いが始まる――


次回、「常世の森・後編」、光輝たちの決断の時が訪れる!

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