よく喋る関西弁の女友達が唯一黙る瞬間

常に喋りまくる明るい女友達に、どんな時でも黙らないんじゃないかと冗談っぽく言ってみた。行った後で失礼だったかもしれないと心配になったが、わははと笑いながら楽しそうに答えてくれる。


「せやな〜、ほんまに黙ってる瞬間ほぼ無いかも。楽しい時は勿論めっちゃ喋るし、怒ってる時でもベラベラ文句言うしな〜。悲しかったら気分変える為に、恥ずかしくても気ぃ逸らす為に喋りまくりやで〜。一人の時はそりゃ静かな時もあるけど、相手おったら絶対話し掛けてまうわ〜」


一人でも静かな時は少ないのかよと言うと、笑いながら「独り言多いねん〜。テレビと会話したりも多いわ。後は、セルフツッコミとか?ボケやなくてクールで鋭いツッコミを売りにしてる女やから、常日頃から技磨かんとな」と返される。女友達はまだまだ喋り続けており、本当に黙らないのだと態度で示され苦笑するしかない。

だが、何かに思い至ったのか、女友達は気恥ずかしそうな愛想笑いを浮かべ目を逸らされる。どうしたと、聞いてみた。


「いや〜、あはは。あったわ、黙る瞬間。まあ、こん時くらいは、流石に黙っちゃうな〜」


勿体ぶった言い方をされ、興味が湧いてしまう。聞いてもはぐらかされるが、熱心に教えて欲しいと強請ってみる。「待って待って、無理やって〜」と照れていたが、どうやら根負けした様で、「じゃあ…えっと…。黙るとこ、見せたるわ…。引いたら、怒るからな?」と折れてくれた。ワクワクしながら、その瞬間を待つ。ゆっくりと、女友達が近付いてくる。

キスを、された。それも、舌を口内に捩じ込まれ、激しくはないがねっとりとした、長い時間舌を絡ませる濃厚なキス。


「…な?喋らんかったやろ?キスの時は、黙る。他の時は、割と喋る。キスは好きやから、集中して黙ってまうねん」


濡れた唇を指で拭われながら、艶やかに微笑む女友達。漏れる熱っぽい吐息は、自分のものか女友達のものかわからない。ただただ火照りに圧倒され、女友達から目が離せない。


「ほんまか、試してみるか?キス以外やったら、どんな状況でも喋ってるんか、色んなことして確かめてみても、ええで?でも、キスはいっぱいシてくれなイヤやで?もっともっと、おしゃべりな女を黙らせてや♡」


舌で唇を舐められる。明るい女友達の、日常からかけ離れた妖艶な姿。唯一黙る瞬間のキスに、心奪われ夢中になっていく話。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る