モテまくる異世界ハーレム最強転生の絶望
目覚めると、舗装されていない岩肌の天井が視界の全てだった。空気の伝わり方で、ここが洞窟であることを瞬時に理解した。そして、間髪おかずに構造を微細に把握して脳内マッピングができたことにより、希望通りに異世界転生できたのだと喜ぶ。
転生を司る女神に、兼ねてより思い描いていた最強能力を捲し立てる様に願った。まず最初に願ったのは、ハーレム生活を堪能したかったので、魅了の瞳と言語による強制命令。この能力はモテまくることにおいても重要だが、命令から人心掌握に繋げて、自分が戦わずとも仲間に敵を倒してもらえばいいと考えたからだ。とはいえ、不意の事態があることもあるだろう。その対処として、自動発動するパッシブスキルである無尽蔵のオートヒーリングを願う。病気であっても即座に完治する強力なヒーリング能力を願ったが、今まさに毒気がありそうなすえた臭いを感じながらも身体に異常はなく、正常に作用しているのだと思えた。
これらに加えて、第六感に近い超常的な危機察知能力で自分は最強となる。予言めいた能力であると信じられないタイミングが怖いので、些細な空気の動きも察知する鋭敏な肌感覚を希望した。敵を事前に避ける為の能力として考案したが、マップ把握にも使えるのだと、素晴らしい能力を思いついたと改めて自分の頭の良さに感服する。
更に、異世界の希望も女神に伝えた。モテまくる為に自分の他は女性ばかりな、都合のいい世界。ついでに魔物も全て見目麗しく可愛らしいメスにして、男として最大限に楽しめる世界にしてもらった。
魅了の瞳、強制命令の言葉、自動発動のオートヒール。鋭敏な肌感覚で危険を察知することがで謳歌する、魔物まで美女ばかりの世界。やはり、完璧だ。これからの素晴らしい日々を予感して、ニヤニヤ笑いが止まらない。
空気の動きから、洞窟内に数十の人影を把握した。多少の生活雑貨の様なものまで認識でき、洞窟を居住としている異世界の文明レベルへの指南からモテまくりハーレムは始まるのだろうとほくそ笑む。危険があったとしてもオートヒールがあれば対処できるだろうと、人影に接触を試みる。
そこにいたのは、腰蓑を纏っただけの美女達。耳が尖っており、余りにも美しい容姿である為にエルフであろうと思えた。原始的な生活であることに苦笑しながらも、美女達のあられもない姿に、ほのかな劣情が滲む。
熱っぽい吐息を漏らしながら、にじり寄ってくる美女達。早速魅了が発動したかと、言葉で跪けと強制命令を発動する。だが、歩みは止まらない。美女達は、見目麗しい容姿に似つかわしくない「グギギ…♡」と異音を発しながら、涎を垂らして近付いてくる。
洞窟内は暗く、今まで気付けなかった。美女達の肌色は、緑である。尖った耳に、緑の肌。つまり、この美女達は、ゴブリン?
いつの間にか、取り囲まれていた。必死に言葉を投げかけるが聞き入れてもらえず、それどころかケタケタと笑われる。言葉が通じなければ、強制命令は発動しないのかもしれない。ならばと、自分の能力を思い返してみる。最強を願ったのだから、ゴブリン如きに負ける筈がない。
魔物すら発情させ続ける、目が合うだけで情欲を刺激する瞳。どれだけ乱暴に弄ばれても壊れぬ、楽しみ尽くせる玩具適正があるオートヒール。空気が触れるだけで微細に感じ取れる程の、痛みも快楽も全てを余す所なく体感する敏感な身体。
自分は、目の前の美女達に、ゴブリンの慰み者としてモテまくるだろう。メスから永遠に貪られるハーレムを予感して、絶望する話。
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