ちょっとエッチな短編集

ハジメタイチ

キスは健全?

キスだけなら健全だ。エロくないよな?と、対面で酒を飲む女友達に話題を振った。女友達は、またかと呆れるようなため息を吐き、じろりとこちらを睨む。


「…いや、不健全なキスもあるんじゃない?知らんけど」


めんどくさそうな態度でありながらも、話しを合わせてくれる女友達。いつもこちらからの一方的な話題提供ではあるが、酒の席での恒例となった議論が始まった。

議論は、自分が勝ち越している。なぜならば、有利な方をわざと選んで、あらかじめ意見をまとめておいて議論を始めるからだ。今回も、キスが全年齢であると言う事実に、反論の余地はないだろう。勝ちは明らかではあるが、事前に考えていた意見を捲し立てる。

唇、舌、口内なんてセンシティブな部位じゃないじゃん。親愛のキスとかどうなんのよ?キスだけでエロいとか、ガキだね〜。ニヤニヤと煽りながら、一方的な議論を進める。


「うるさいうるさい。ほら、試してやるから、少し黙れ」


計画通りだと、内心でほくそ笑む。反論などできない筈だが、負けず嫌いの女友達は簡単に負けを認めないだろうと予測していた。酔っ払ったタイミングでそんな状況まで追い込めば、エロいキスを実際にやってみるしか勝ち目はないと考えるであろうと、話題を振ったのだ。

このまま意見で圧倒して、労なく勝ててもいい。女友達の負けず嫌いな性格を刺激して、キスができたとしも儲け物。隙を生じぬ二段構えが成功したとニヤリとしながら、キスを待ち望みドキドキしながら目を閉じる。


「は?キス待ちの顔、キモ。アンタにキスなんてする訳ね〜でしょ。指、貸して。不健全だって、証明してやるから」


なんだキスはないのかとガッカリしながら、指を差し出す。自分も酔いが進んでおり、何をされるかまでは理解が追いついていなかった。言われた通りに、深く考えず行動しただけ。だが、始めてしっかりと見た女友達の長い舌に、ギョッとした。


「あ〜…。言ってなかったっけ?私、スプタンなの。じゃ、指舐めるね〜」


こちらの動揺を意に介さず、先が割れた舌を指に這わせられる。

レロレロと、ゆくっりと丁寧な蠢き。巧みに、指の間を刺激される。二箇所に刺激があるのは、スプリットタンの特徴か。段々と小刻みな蠢きになっていき、割れた舌の双方が意思を持っているかのように舐められる。

甘えるように絡み付き、指を扱く舌。長い舌が巻き付いているようだと感じると共に、柔らかく温かいぬめりとした快感で、ただただ包まれ愛でられているとも感じる。しかし、この動きを把握できていたのは、最初のうちだけ。蠢き絡みつく感触に圧倒され始め、舌がどんな動きをしているのか理解できなくなっていく。わかるのは、気持ちいいという感覚だけ。女友達の、卑猥な生き物のように蠢く舌に、蠱惑的な心地よさに悶えることしかできない。


「はい♡私の勝ち♡指舐めてるだけでそんなんなるんだから、キスしたらもっとヤバいでしょ?♡文句ないよね〜?♡キスは、不健全で〜す♡」


上機嫌で酒を飲み始める女友達。自分は腰を曲げながら、敗北を認めて頷く。確かに、この舌はエロ過ぎる。キスなんてされたら、どうなってしまうのだろう。想像するだけで、興奮がおさまらない。


「あれあれ〜?♡顔、赤いよ〜?♡あ〜あ♡弱点、知られちゃったね〜?♡」


ニヤつきながらチロチロと舌を見せつけ、煽ってくる女友達。だが、視界に捉えるだけでドキドキしてしまい、反論することができない。自分は舌に対して、特別な魅力を感じたことは今までなかった。この時までは…。

以来、ことあるごとにニヤニヤ笑いで舌を見せつけられ、その度に反応してしまう身体になってしまった。一般的には不健全であるとも言い切れない行為で、新たな性癖を目覚めさせられてしまった話。

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