第9話 真実への追跡

「行きましょう、橘さん。」

鳴海夕貴は、静かにSUVを見つめながら小さく頷いた。男たちが持ち去ったもの――それは、事件の核心に迫る何かであると確信していた。


「焦るな。尾行には冷静さが必要だ。」

橘がそう言いながら懐中電灯を消した。二人はSUVに気づかれないよう距離を保ちながら、車が動き出すのを待った。


「奴らの次の目的地がどこであれ、必ず黒幕に繋がる情報があるはずだ。」

「ええ。ただ、慎重に行かないと私たちも危険です。」

鳴海は自分を落ち着かせるように深呼吸した。


SUVがエンジンをかけ、ゆっくりと現場を離れる。

「動いたな。」

橘が低く呟き、二人は物陰から静かに車を追った。


「車は一台だけ……?」

鳴海が注意深く周囲を見回す。


「表向きはな。」

橘は短く答えた。

「だが、何かの目的地に着けば、さらに別の連中が出てくる可能性がある。」


二人はSUVを尾行しながら、車の速度や方向に注意を払い続けた。町外れの道路に入ったとき、橘が小声で言った。

「この道……どこに繋がっている?」


鳴海は地図アプリを開きながら確認する。

「この先に、廃工場があります。ほとんど使われていない場所です。」


橘は無言で頷き、目の前の車をさらに追った。


SUVが廃工場の前で停車するのを見届け、二人は車から降りた。

「ここで何をするつもりだ?」

橘が呟きながら、鳴海と共に建物の影に身を隠した。


男たちはSUVから荷物を降ろし、中に運び込んでいるようだった。工場内からはわずかな明かりが漏れ、薄暗い中でも何かの作業をしている気配が感じられる。


「橘さん、どうしますか?」

鳴海が緊張した面持ちで問いかけると、橘は少し考え込んだ後、小さく息を吐いた。

「まずは中の様子を確認する。」


二人は足音を殺しながら工場の窓に近づき、内部を覗き込んだ。その中では、男たちが袋の中身を確認し、さらにいくつかの新たな荷物を用意しているようだった。


「取引か……?」

橘が低く呟く。だが、そのとき、工場の奥から新たな人物が姿を現した。


「橘さん……あの人……。」

鳴海の声が震えた。現れたのは、三栄建設の西田貴彦だった。彼は冷静な表情で男たちに指示を出している。


「やはり……西田が絡んでいたか。」

橘は目を細めながら言った。


突然、工場の中から銃声が響いた。

「何!?」

鳴海が驚いて声を上げそうになるのを、橘が手で抑えた。


「静かにしろ。」


工場の中では、男たちの間で何かトラブルが起きたようだった。一人の男が倒れ、他の男たちが慌てて荷物を再びSUVに積み込み始める。


「何が起きたんでしょう……。」

「内部分裂か、それとも警告か。」

橘は険しい表情で工場の様子を観察している。


「このままでは証拠が持ち去られてしまいます。」

鳴海の言葉に、橘は短く頷いた。

「だからこそ、次の一手が重要だ。下手に動けばこちらも危険だが、証拠を失えば真実には辿り着けない。」


選択肢


鳴海と橘が次に取るべき行動を選んでください。

選択肢によって物語の進展が変わります。

1.工場内に突入し、西田と直接対決する

→ リスクを承知で工場内に入り、直接西田を問い詰める。

2.男たちが再び車で移動するのを追う

→ 工場内で何が起きたのかを見届けた後、次の行き先を尾行してさらなる手がかりを掴む。


読者へのメッセージ


「読者の君へ――」

「西田の姿、そして突然の銃声――これらは偶然ではない。君が選んだ行動が、今この物語を動かしている。次の一手は、リスクを冒して真実に迫るか、それとも更なる確証を掴むか。どちらの道も、君の直感に委ねられている。慎重に考え、君自身の正義を見せてほしい。」

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