第8話 暗闇の監視
「静かですね……嫌なほど。」
鳴海夕貴は息を殺しながら、物置の陰に身を潜めていた。再開発予定地の広大な敷地は、月明かりが照らす薄暗い静寂の中に沈んでいる。
「奴らの動きに集中しろ。それ以外のことは考えるな。」
橘の低い声が、冷たい夜の空気を切り裂いた。彼は懐中電灯を握りしめ、目の前の動きを鋭く追っている。
「分かっています。でも、あのケース……何か大きな意味があるはずです。」
鳴海は、物置裏から男たちが掘り出した金属ケースを目で追った。男たちは慎重にケースを開き、中身を確認している。
「おそらく、これは彼らにとって最後の切り札だ。」
橘は静かに言った。その視線には冷徹な観察眼が光っている。
「最後の切り札……?」
「何らかの理由で、ここに隠しておく必要があった。それが証拠なのか、あるいは犯罪そのものかはまだ分からないがな。」
男たちはケースの中からいくつかの袋と書類を取り出し、それらを丁寧に確認している。その中で、一人の男が小声で何かを呟いた。
「計画書……いや、これは……。」
「橘さん、彼らが言っている計画書って……?」
鳴海が囁くように尋ねると、橘は短く答えた。
「再開発計画に関連するものだろう。だが、それ以上に重要なのは、奴らの焦りだ。」
男たちはさらに何かを議論しているようだった。その中で一際目立つ、リーダー格の男が低い声で命じた。
「必要なものだけ持って行け。他は置いていけ。」
「置いていく……?」
鳴海はその言葉に引っかかった。重要そうな書類をわざと残すという行動には違和感がある。
「フェイクだ。」
橘が静かに呟いた。
「奴らは、後から追う者を混乱させるために意図的にフェイクを残す。だが、本当に重要なものは必ず持ち去る。」
男たちの動きを観察していると、一人の男が手にした紙に何かが書かれているのが見えた。その紙には、数字と記号が並んでいた。
「橘さん、あの紙……暗号ですか?」
鳴海が小声で囁くと、橘は目を細めた。
「可能性は高い。記号や数字は、麻薬取引や裏社会での通信手段としてよく使われる。」
「どうやって解読するんですか?」
鳴海は興味深げに橘を見たが、彼は少し眉をひそめながら答えた。
「その場で解読するのは難しい。だが、記録しておけば後から解析できる。」
橘は素早くスマートフォンを取り出し、ズームしてその紙の内容を撮影した。
男たちはケースの中から袋を取り出し、それを慎重に車へ運び始めた。
その間、一人の男がリーダーに近づいて話しかける声が聞こえた。
「……本当にここにあったのか? 確かに隠したはずだったのに……。」
「おかしいな。」
橘が小さく呟いた。その声に、鳴海もすぐ反応する。
「おかしいって、どういうことですか?」
「もし隠したものを取り戻しに来たのなら、こんなに躊躇う必要はない。奴らは何かを疑っている。」
「疑っている?」
「俺たちが先にここに来たことに気づいているのかもしれない。それか……別の何者かが動いている可能性もある。」
鳴海は息を呑んだ。橘の言葉が事実なら、この場には自分たち以外にも影の存在がいるということになる。
男たちの動きを見守る中で、鳴海の目がある一点に留まった。
「橘さん、あれ……。」
彼女が指さしたのは、男たちが放置した書類の一部だった。そこには、前回物置内で見つけた再開発計画書のコピーのようなものがある。
「なぜ放置した?」
橘が書類に目を向けながら呟く。その瞬間、彼の表情が変わった。
「これは……表向きの計画書だ。」
「表向き?」
「つまり、これを残しておけば、捜査を撹乱できる。だが、真実は奴らが持ち去ろうとしているものの中にある。」
男たちが袋と書類をSUVに積み込み終えたとき、リーダー格の男が周囲を見回しながら口を開いた。
「ここで少しでも目撃されたらアウトだ。急いで引き上げる。」
「どうしますか?」
鳴海が緊張した面持ちで橘を見つめた。橘はしばらく黙り込み、やがて小さく息を吐いた。
「動くタイミングを間違えれば、証拠も奴らも失う。だが、ここでじっとしていれば、奴らの目的地を特定できない。」
「つまり、リスクを取るか、慎重に動くか……ですね。」
鳴海の言葉に、橘は頷いた。
選択肢
鳴海と橘が次に取るべき行動を選んでください。
選択肢によって物語の進展が変わります。
1.男たちを尾行する
→ 男たちの車を密かに追跡し、次の目的地を特定して黒幕の全貌に迫る。
2.放置された書類を解析する
→ 男たちが故意に残した可能性のある書類を解析し、そこに隠された暗号や意図を探る。
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あなたの選択が、鳴海を導き、物語の行方を決定します。
読者へのメッセージ
「読者の君へ――」
「奴らは計画の核心を抱えて逃げようとしている。だが、わざと残したものの中にも手がかりがあるかもしれない。
君がどちらを選ぶかで、この事件の行方が変わる。慎重に考え、次の行動を決めてくれ。」
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