第7話 見落とされた真実
「戻ってきましたね。」
鳴海夕貴は再び再開発予定地に立ち、敷地全体をじっと見回していた。
そこには、昼間の活気が失われ、冷え冷えとした空気が漂っている。工事用の重機は静まり返り、現場はまるで時間が止まったように不気味な静寂に包まれていた。
「西田が言っていた『見落とし』がここにあるはずだ。」
橘は周囲を見回しながら呟いた。その声には、わずかな緊張感が漂っている。
「でも、現場はあらかた調べましたよね? 他に何が……。」
鳴海が疑問を口にすると、橘は低い声で答えた。
「細かい部分を見逃している可能性がある。特に、奴らが隠したいものほど、普通の目には映らない場所にあるだろう。」
「また来たのか?」
再開発現場の入口で、前回会った現場監督が驚いた表情を浮かべていた。
「西田さんの話を聞いて、どうしても確認したいことがあるんです。」
鳴海が静かに説明すると、監督は渋い顔をして腕を組んだ。
「確認したいこと……。また厄介事か。」
「監督さん、私たちに協力してもらえませんか?」
鳴海は一歩前に出て、真剣な目で監督を見つめた。その表情に少し圧されたのか、監督はため息をつきながら首を振った。
「……分かったよ。ただ、前回のこともあるし、あんまり派手に動かれると俺の立場が危うい。」
「迷惑はかけません。どうしても調べたいんです。」
鳴海の力強い言葉に、監督は小さく頷いた。
監督に案内されながら、二人は再び敷地の奥へと向かった。
「この辺りはどうですか?」
鳴海が尋ねると、監督は少し考え込んだ後、指を指した。
「あそこだ。古い物置が一つある。普段は使わないが、工事資材を一時的に保管していた場所だ。」
「物置……?」
鳴海がその方向を見ると、確かに古びた小さな建物が見える。周囲は草が生い茂り、長い間手入れされていない様子だった。
「普段使わないなら、隠すにはうってつけの場所ですね。」
橘が静かに言いながら、物置へと足を向けた。
物置の扉は錆びついており、開けるのに少し苦労したが、鳴海と橘はようやく中に入ることができた。
「……これは……。」
鳴海が中に入ると、薄暗い室内にいくつかの大きな箱が積まれているのが見えた。
橘が懐中電灯を取り出し、箱の表面を照らす。そこには、前回のコンテナと同じように三栄建設のロゴが刻まれていた。
「また三栄建設か。」
鳴海は一つの箱に近づき、工具で慎重に開けた。中から出てきたのは、大量の書類とデータディスクだった。
「これは……資金計画書? いや、何かもっと……。」
彼女が手に取った書類には、再開発計画に関わる詳細な資金の流れや関係者の名前が記されていた。その中には、これまで名前が浮かんでいなかった企業や個人の記録も含まれている。
「これが西田が言っていた『見落とし』だ。」
橘が短く言い切った。
鳴海は書類を慎重に読み進めながら呟いた。
「この記録、明らかに不正ですよ。資金が複数のルートを通じて裏社会に流れている。しかも……。」
彼女はページの端に記された名前に目を止めた。
「この名前、どこかで見たような……。」
橘が鳴海の手元を覗き込み、目を細めた。
「……読者?」
鳴海は一瞬固まった後、顔を上げて橘を見た。
「読者って……私たちを追っている誰かってことですか?」
橘は何かを考え込むように視線を落とした後、小さく呟いた。
「いや、もっと大きな意味だ。この名前が指しているのは、単に情報を持つ者ではなく、すべてを操る存在を示唆している。」
「操る……?」
鳴海が困惑した表情を浮かべる中、橘は静かに言った。
「美月を追い詰め、俺たちを動かしている黒幕が、君たちの手の中にある。」
物置の中で発見された証拠を手にした二人が外に出ると、すでに辺りは暗闇に包まれていた。
そのとき、遠くから車のエンジン音が聞こえてきた。
「誰か来る。」
橘が低い声で警告し、鳴海は懐中電灯を消した。二人は物置の陰に身を隠しながら、暗闇の中に視線を走らせた。
SUVが現場に滑り込むと、中から数人の男たちが降りてきた。彼らは現場を見回しながら、小声で何かを話している。
「……監視しているのか、それとも……。」
鳴海が囁くと、橘は冷静に言った。
「行動を見てみよう。彼らがここで何をするのか確認する。」
男たちは物置の方向に近づいてきた。その様子に、鳴海は息を呑んだ。
選択肢
鳴海が次に取るべき行動を選んでください。
選択肢によって物語の進展が変わります。
1. 男たちの動きを監視し続ける
→ 物置に近づく男たちを追いながら、彼らの意図を探る。
2. 証拠を確保してその場を離れる
→ 発見した証拠を持ち帰り、安全な場所で解析する。
応援コメント依頼
あなたの直感を信じて、次に進む道を選んでください!
応援コメント欄に「1」または「2」を記載してください。番号だけの記載でも大歓迎です!
明日7時までにコメントをお願いします。
あなたの選択が、鳴海を導き、物語の行方を決定します。
読者へのメッセージ(橘からの語り口調で)
「読者の君へ――」
「ここで発見した証拠は、事件の核心に迫る重要な鍵だ。だが、俺たちのすぐ近くまで何者かが迫っている。
この状況下で何を優先するべきか、それを決めるのは君だ。真実への道を選んでほしい。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます