第5話 コンテナの秘密
「これを開けるしかないな。」
橘が低い声で言いながら、金属コンテナを見下ろした。その大きな箱はどっしりと存在感を放ち、まるでその中に隠された秘密を守るかのように静かに佇んでいた。
「でも、許可もなしに開けていいんですか?」
鳴海が少し不安そうに尋ねると、橘は冷静に彼女を見つめた。
「この場で待っていれば、許可を取る前に誰かが中身を隠すだろう。それに、今この瞬間、中に何があるのかを知ることが重要だ。」
「……わかりました。」
鳴海は小さく頷き、コンテナの鍵穴に目を向けた。
「でも、これ……鍵がかかってますね。」
「問題ない。」
橘が言うと同時に、どこからか工具を取り出して鍵穴に押し込んだ。数秒後、「カチリ」と音がしてロックが外れる。
「橘さん……慣れてますね。」
鳴海は驚きつつも、その手際の良さに感心していた。
「刑事は何でもできる必要がある。」
橘は淡々と答えると、ゆっくりとコンテナの扉を開いた。
コンテナの中には、いくつもの木箱が積み重なっていた。木箱には黒いペンで何かが書かれているが、文字は擦れて読めない。
「……これは何?」
鳴海が箱の表面に触れると、指に微かな粉のようなものが付着した。
「粉塵……石膏かセメントのようだな。」
橘が木箱の蓋を工具でこじ開けると、中から現れたのは大量の紙袋だった。それぞれの袋には、番号が振られたラベルが貼られている。
「これ、ただの建築資材じゃないですね。」
鳴海が袋を手に取ると、その軽さに驚いた。袋の中には何かが詰まっているが、予想以上に軽い。
「開けてみろ。」
橘の指示に従い、鳴海は一つの袋を慎重に開いた。中から出てきたのは、白い粉末――明らかに建築資材とは違うものだった。
「これって……。」
鳴海が息を飲んで言葉を詰まらせると、橘が粉末を少量指につけて確認した。
「間違いない。覚醒剤だ。」
鳴海は衝撃を受けた表情で、コンテナの中を見渡した。
「まさか……これ全部が……?」
「そうだ。」
橘が冷静に答えた。
「ここは再開発計画を隠れ蓑にした麻薬の運搬拠点だ。三栄建設も匠エステートも、この闇取引に関与している可能性が高い。」
二人がコンテナの中を調べていると、背後から不意に声が響いた。
「おい、何をしてる!」
鳴海が振り返ると、現場監督と数人の作業員がこちらに向かってきていた。その表情は怒りと緊張が入り混じり、明らかに何かを隠そうとしているようだった。
「これはどういうことですか?」
鳴海が毅然と問いかけると、監督は顔を真っ赤にしながら答えた。
「勝手にコンテナを開けるなんて、許されると思ってるのか!」
「これを見ても、まだ何も知らないと言えるんですか?」
橘が袋を掲げて見せると、監督の表情が一変した。焦りと恐怖がその顔に浮かぶ。
「そ、それは……ただの資材だ!」
「嘘をつくな。」
橘の低い声がその場の空気を凍りつかせる。
作業員たちは困惑した様子で監督を見つめている。だが、監督は震える声で叫んだ。
「こんなこと、私は知らない! 上の連中が勝手にやってることだ!」
「上の連中?」
鳴海が鋭く問いかけると、監督は一瞬言葉を詰まらせた。
「……三栄建設の連中だよ。私はただの現場の人間だ。何も知らないままやらされているだけだ!」
「それなら、なぜ隠そうとした?」
橘が冷静に問い詰めると、監督はうつむきながら答えた。
「……だって、もしこれがバレたら、俺たちはどうなる……。」
「知らなかったでは済まされないぞ。」
橘の言葉に、監督は完全に押し黙った。
そのとき、鳴海のポケットに入っていたスマートフォンが震えた。
彼女が画面を確認すると、非通知の着信だった。
「……誰だ?」
橘が警戒の目を向ける中、鳴海は電話に出た。
『余計なことをするな。』
低く冷たい声が、鳴海の耳に響いた。背筋が凍るようなその声は、まるで二人の動きをすべて見透かしているかのようだった。
「……誰ですか? あなたは……。」
鳴海が問い返したが、返事はなく、すぐに電話は切れた。
「何があった?」
橘が近づいてきた。
「非通知で、脅迫のような電話が……。誰かが私たちを見ている?」
橘はコンテナの中を一瞥し、静かに言った。
「これ以上ここにいるのは危険だ。一度署に戻る。」
鳴海はその場に残されたコンテナを見つめながら、橘の言葉に従い、その場を後にした。
選択肢: 読者への問いかけ
鳴海が次に取るべき行動を選んでください。
選択肢によって物語の進展が変わります。
1.三栄建設に直接乗り込む
→ 現場で得た情報をもとに、三栄建設の幹部に接触し、闇取引の真相に迫る。
2.非通知の電話の発信元を追跡する
→ 鳴海に脅迫の電話をかけてきた人物の正体を突き止め、背後にいる組織を洗い出す。
応援コメント依頼
あなたの直感を信じて、次に進む道を選んでください!
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明日7時までにコメントをお願いします。
あなたの選択が、鳴海を導き、物語の行方を決定します。
読者へのメッセージ(橘からの語り口調で)
「読者の君へ――」
「見え始めた闇は、深く大きい。この麻薬の流れを追うべきか、それとも脅迫の影を掴むべきか。どちらも危険だが、どちらも真実への道だ。
君の選択が、鳴海の次の一歩を決める。そして、その一歩が事件の核心を暴く。信じて進んでくれ。」
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