第2話 再開の影
「これが、再開発反対運動のリーダー、石田修二か……。」
鳴海は写真に写る男性の顔と、手元の資料に目を落とした。
再開発反対運動の象徴的存在とされる彼は、地元の再開発計画に真っ向から反対し、その活動は激しいものとして知られていた。
現場は、再開発予定地からほど近い小さな集会所。鳴海は橘の言葉を思い出しながら、足を踏み入れた。
「焦るな。すべてのピースが揃うときに真実が見える。」
集会所の中では、石田と数人の住民たちが何やら話し合っている様子だった。鳴海が入ると、一瞬空気が凍ったように静まり返った。
「警察……か。」
集団の中心にいた石田が、冷たい目で鳴海を見つめる。
「お忙しいところ失礼します。鳴海夕貴と申します。佐伯美月さんのことでお話を伺いたくて。」
鳴海が穏やかに切り出すと、石田は腕を組んだまま椅子に深く腰を下ろし、無言で顎をしゃくって「話せ」と合図した。
「佐伯美月さんは、あなた方の活動に深く関わっていたようですね。」
鳴海が切り込むと、石田は少し鼻で笑った。
「深く関わってた? いや、彼女は情熱的だったが、それだけだよ。俺たちの本格的な活動には足りてなかった。」
「それだけとは?」
鳴海が問い返すと、石田は言葉を探すように少し間を置いた。
「彼女はな、善人すぎた。俺たちが向き合ってるのは汚い利権の世界だ。中途半端な覚悟じゃ踏み込めない。だが彼女は……それでも子どもたちのためだと言って動いてた。危険を恐れずにな。」
「その覚悟が、中途半端だったと?」
鳴海が探るように問いかけると、石田は目を細めて鳴海をじっと見つめた。
「そうだ。美月は何かを掴んでた。だが、それをどうするかまで考えきれてなかった。」
「掴んでいた……何を?」
石田は少し顔を伏せた後、ため息をついて言った。
「金の流れだよ。この土地で誰が儲けているのか、どこでどんな汚い取引が行われているのか。彼女はそれを暴こうとしていた。」
「彼女が具体的に動いていたことは?」
鳴海の問いに、石田の横に座っていた別の住民が声を上げた。
「数日前、夜遅くに見かけたよ。ひとりで何か運んでた。ここの集会所に、何かの書類を持ち込んでたみたいだったな。」
「夜遅く?」
鳴海が詳細を聞こうとすると、石田が住民を手で制した。
「俺たちの運動の情報は守らなきゃならない。それ以上は話せない。」
「ですが、彼女は殺されています。彼女が持ち込んだものが事件に関係している可能性がある。」
鳴海の訴えに、石田は少し考え込んだ後、小さくうなずいた。
「分かった。ただし、これ以上俺たちの運動を邪魔するようなら……俺も黙っていられない。」
その言葉に、鳴海は目を伏せながら小さく息を吐いた。
石田が集会所の奥から持ってきたのは、古びた茶封筒だった。
「これが美月が持ち込んだものだ。中を見ればわかるだろう。」
鳴海が封筒を開くと、中には数枚の書類が入っていた。
そこには、再開発計画に関する詳細な資金計画書と、いくつかの大手企業の名前が記されていた。
さらに、手書きで「子どもたちの未来のため」と書かれたメモが挟まれている。
「彼女が掴んでいたのは、これですか……。」
鳴海がつぶやくと、石田が小さくうなずいた。
「だが、それが何を意味するのかは、彼女自身も完全に理解していたわけじゃないだろうな。」
鳴海はその書類を手に取りながら、心の中で美月の姿を思い浮かべていた。
なぜ彼女は、ここまで危険なことに踏み込んだのか……。
集会所を後にしようとしたその時、鳴海は背後に冷たい視線を感じた。
誰かが遠くから自分を見ているような気配。
振り返ると、集会所の裏手の影に、傘を差した男の姿が一瞬見えた。
「誰……?」
鳴海が声をかけようとすると、その男はすぐに裏路地へと消えていった。
「……気のせいじゃない。」
鳴海はその不安を振り払うようにしながら、署に戻るために足を速めた。
選択肢
鳴海が次に取るべき行動を選んでください。
選択肢によって物語の進展が変わります。
1. 手に入れた書類を徹底的に調査する
→ 再開発計画の資金計画に記された大手企業の背後関係を探り、事件の核心に迫る。
2. 集会所の近くで目撃した謎の男を追う
→ 監視者とも思える男の正体を追い、彼が事件にどう関わるのか調べる。
応援コメント依頼
あなたの直感を信じて、次に進む道を選んでください!
応援コメント欄に「1」または「2」を記載してください。番号だけの記載でも大歓迎です!
明日7時までにコメントをお願いします。
あなたの選択が、鳴海を導き、物語の行方を決定します。
読者へのメッセージ
「読者の君へ――」
「再開発計画の裏に隠された闇は、白薔薇事件とも繋がりを見せ始めた。だが、美月が残した手がかりがすべてではない。
監視の目が君を見つめているかもしれないが、それでも進むべき道を選んでくれ。君の選択が、この事件の鍵になる。鳴海に力を貸してほしい。」
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