【読者参加型 刑事小説 毎日17時更新】The End of Justice

湊 マチ

第1話 白薔薇の再来

雨が降る夜。パトカーの赤色灯が、静まり返った廃工場の外壁に不気味な影を映し出していた。誰もがこの場所を避ける。そんな場所に、今、一つの悲劇が横たわっている。


「橘さん、こっちです!」

新人刑事の鳴海夕貴は、足元の水たまりを蹴りながら声を張り上げた。

彼女の目の前には、一人の若い女性の遺体が転がっている。


「白薔薇……またですか。」

鳴海の手元を橘和真が懐中電灯で照らす。そこには、冷たく握られた白い薔薇と、小さな古びたランプがあった。


「6年前の白薔薇連続殺人事件。これとそっくりです。」

鳴海は思わず背筋を伸ばした。


「模倣犯か、あるいは――。」

橘はその言葉を飲み込むように途中で止めた。代わりにランプを拾い上げ、その底を見つめる。目を細めながら、彼は呟いた。

「最後の光、か。」


鳴海が反応するより早く、橘は遺体のそばにしゃがみ込む。ランプに書かれた言葉に対し、特別な意味を感じているようだった。


「橘さん、どういう意味ですか? 最後の光って。」

「まだわからない。だが、きっとこの事件の鍵になる。」


鳴海は橘を見つめた。彼は相変わらず冷静だ。しかし、その声の奥に微かに隠された焦りを感じた。


「被害者の身元が確認されました。」

現場に駆けつけた鑑識員が報告する。

「名前は佐伯美月、29歳。保育士をしていたようです。」


「保育士……?」

鳴海は驚きの表情を見せた。

「保育士がなぜこんな場所で殺されるんですか?」


「いい人でも、何かを隠している場合がある。」

橘は鋭い視線で遺体を見つめながら答えた。

「誰にでも二面性がある。彼女も例外じゃない。」


鳴海はその言葉に納得しきれないまま、遺体のそばに置かれたランプに目を移した。

「でも、ランプと白薔薇は……ただの演出ですか?」


橘は鳴海をじっと見た。

「君はどう思う?」


その問いかけに鳴海は一瞬戸惑った。新人刑事としての知識と直感が入り混じる。

「これは、犯人の……何かしらのメッセージだと思います。」

「それがどんなメッセージか、考え続けるんだ。」

橘は立ち上がり、外の雨音を聞きながらこう付け加えた。

「メッセージは、時に犯人自身の鏡になる。」


翌朝、鳴海は署内で橘に問いかけた。

「橘さん、白薔薇事件って何か特別な意味があるんですか? 私はまだ新人なので、詳しいことは知らなくて。」


橘は書類に目を落としたまま答える。

「6年前、法で裁けない罪を持つ人間ばかりが狙われた事件だ。全員のそばに白薔薇が置かれていた。未解決のまま、突然終わった。」


「法で裁けない罪……?」

「そうだ。だが、真犯人が何を基準に裁いていたのかはわからない。今でもな。」


鳴海はその言葉に動揺しつつも、「法で裁けない罪」というフレーズに特別な興味を抱いた。


「もし今回の事件が白薔薇事件と関係しているなら、また法を越えた正義が動いているってことですか?」


橘は視線を上げ、鳴海の目を見た。

「それが正義かどうかは、誰にも判断できない。」


---


雨上がりの朝、鳴海夕貴は「ひまわり園」の門の前で立ち止まった。

どこかぎこちない空気を感じながら、深呼吸を一つ。そして門をくぐると、子どもたちの笑い声が耳に飛び込んできた。

その無邪気な声が、昨夜の現場で見た冷たい遺体のイメージと対照的で、心に妙な重みを残す。


「お忙しい中すみません。鳴海と申します。」

保育園の職員室で、美月の同僚である若林奈津子が迎え入れてくれた。

「あの、美月さんのことについて少しお伺いしたいんです。」


奈津子は少し目を伏せた。だが、数秒後に顔を上げ、穏やかな声で話し始めた。

「美月は、本当に良い人でした。いつも子どもたちのことを最優先に考えていて、どんな小さな悩みにも耳を傾ける、そんな人でした。」


鳴海はノートを取り出しながら静かに頷いた。

「ですが……少し無理をしているようにも見えました。」


「無理を、ですか?」

鳴海の問いに、奈津子は少し言葉を探すような仕草を見せた後、続けた。

「最近、美月が再開発反対運動に関わっているって話を聞きました。それも、かなり積極的に。」


鳴海は思わず奈津子の顔を見つめた。

「再開発反対運動……。」

「ええ。でも、あまりに深入りしすぎている気がして。彼女らしくないというか、危ないことに巻き込まれるんじゃないかと心配でした。」


「美月さんのロッカーを拝見してもいいですか?」

鳴海が申し出ると、奈津子は園長に目を向け、園長も静かに頷いた。


美月のロッカーを開けると、中には整然と並んだ書類や筆記具の間に、一冊のメモ帳が挟まれていた。

鳴海はそれを手に取り、ゆっくりとページをめくった。


その中には、美月が記したと思われる直筆の言葉があった。

「子どもたちに希望を。未来に光を。」


「未来に光を……。」

鳴海はその言葉を声に出した。その瞬間、彼女の胸の奥に何か熱いものが走るのを感じた。


だが、次のページの一部が、不自然に切り取られているのに気づく。

「……ここに何かが書かれていた。」

鳴海はページの端を慎重に指でなぞりながら、残された部分に意味を見出そうとした。


署に戻ると、鳴海は橘の机にメモ帳を置いた。

「これが、美月さんのロッカーに残されていたものです。ですが……一部が切り取られていました。」


橘は黙ってメモ帳を手に取り、不自然に切り取られたページを目を凝らして見つめた。

「誰かが持ち去った……それとも彼女自身が切り取ったのか。」

「どちらにせよ、この部分には事件の核心が隠されている気がします。」


橘は顔を上げ、鳴海をじっと見た。

「確かに。このメモ帳には、彼女が残した真実の一端があるかもしれない。だが、焦るな。すべてのピースを揃えたときに初めて、真実が見える。」


「橘さん……美月さんの『未来に光を』という言葉は、どう解釈すればいいと思いますか?」

鳴海の問いに、橘は一瞬言葉を探すような沈黙を挟んだ後、短く答えた。

「それが希望なのか、罪を覆い隠すための偽善なのか……それを知るのはこれからだ。」


その時、署内に現れたのは、美月の弟である翔太だった。

彼は無言で鳴海に近づくと、ポケットから一枚の写真を差し出した。

「姉ちゃんが最後に撮った写真だ。」


その写真には、どこか思いつめた表情の美月が写っていた。そして背景には、再開発反対運動の集会と思われる風景があった。

鳴海はその写真を見つめながら、写真に写る人物や場所に何か手がかりがないか目を凝らした。


選択肢: 読者への問いかけ


鳴海が次に進むべき道を選んでください。

物語の進行を左右する大事な選択です。

1.再開発反対運動を調べる

→ 写真に写る集会の背景や運動のリーダーを訪ね、美月が抱えていた秘密の一端を探る。

2.切り取られたメモの内容を分析する

→ メモ帳の切り取られた部分を復元し、彼女が隠そうとした、または隠された真実を追う。


応援コメント選択番号記載依頼


あなたの直感を信じて、次に進む道を選んでください!

応援コメント欄に「1」または「2」を記載してください。

番号だけの記載も、応援の言葉を添えていただくのも大歓迎です。


明日7時までの記載をお願いします。

あなたの選択が、物語の行方を左右します!


橘刑事から読者へのメッセージ


「読者の君へ――」

「この事件の真相に迫るのは、私たちだけじゃない。君もまた、この真実の一端を握っている。

佐伯美月が残した言葉の意味を、そして白薔薇に込められたメッセージを解き明かすために、君の直感を信じてほしい。

正しい道を選ぶか、危険な道を選ぶか――その選択も、時に正義の形を変える。君の選択を待っている。」

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