第22話 二階堂光助
夏の暑い日。俺とレイと静原さんの三人で修行をしていた矢先に、突如現れた茶髪ヘアの謎の青年。彼は二階堂さんの甥っ子、つまりは二階堂さんの親戚だった。
まさかのことに、俺たち三人の驚きの声が、蒸し暑い夏の空へと響き渡る。
「ええぇっー!?二階堂さんの甥っ子!?」
俺の驚きの声に、二階堂さんの甥っ子は笑う。
「そんな驚くことっすかね?っていうか叔父さん、バイトの契約書類、書くもの多すぎるよお!俺は早く悪霊退治して金稼ぎたくてうずうずしてたのにさあ!」
青年は元気いっぱいなうえに声がでかい。
「親戚の子といえどそういうのはちゃんと書いてもらわないと困る。特に霊媒師は非正規雇用のバイトも国がガッツリ管理してるから、尚更だよ」
契約書類。俺もここで雇ってもらう際書いたのだけど、たしかに霊媒師という特殊な職は何かと書くことが多かった。
というかそれよりまだ色々と説明が足りてない。まずこの二階堂さんの甥っ子は何をしに来たのか。
レイも同じ気持ちだったのか甥っ子に問い詰めた。
「それよりアンタは何をしに来た。契約書類ってまさか………」
と、レイの言葉の続きを言うように、二階堂さんが喋る。
「そう。その子は今日からここでバイトとして働く新人。ほら、前に私が言っていた子だよ。その子、私と同じ二階堂家の人間なだけあって、霊媒師としてはかなり強いよ?急だけどまあ、仲良くしてあげてね」
「前に言っていた子……」
静原さんが呟く。そしてふと思い出したかのようにあっ!と声を出した。
「……そう、いえば、二階堂さん。言ってましたね。竜崎くんが、『まだ増えるんですか……』ってため息ついてた……」
「俺ため息つかれてたんすか?」と甥っ子。
静原さんが回想するようにそう言うと、なんとなく俺とレイも思い出してきた。
ああ、たしかに、前に静原さんと初めて出会った時に、二階堂さんがこんなことを言っていたっけ。
『あっ、そうそう。ちなみにあともうしばらく経ったら、またもう一人バイトの子が増えるからよろしくね。今のところ新しく入る新人はその子で最後』
と。どうやらあの時言っていた子が今目の前にいる青年らしい。にしてもまさかそれが二階堂さんの親戚の子だとは思いもよらなかっけど。
そんなことを考えていると、二階堂さんが甥っ子に向かって自己紹介をするよう促す。
甥っ子は自分の名を名乗り出した。
「どもっす!俺は
「高一?じゃあ俺たちより一つ年下か。俺は竜崎レイだ。よろしく」
レイに続いて俺と静原さんも自己紹介する。
「火野飛鳥です。よろしくね」
「静原氷花です。……よ、よろしゅく、お願い、しゅます……」
噛んだ。
それぞれの自己紹介も終わり、それから光助くんが口を開いた。
「よろっす!あっ、叔父さん!俺たち早速今から仕事あるんだよな!早く説明してよ!」
と、興奮を抑えられないようなワクワクな顔で、二階堂さんに言う。
光助くんは言葉遣いこそアバウトというか、ちょっと荒っぽい感じはするのだが、別に不快に思うよな感じではない。むしろやる気十分で元気がよく、人懐っこくてどこか憎めないかわいい後輩と言った感じだ。
………いや、それよりさっきなんて?今から仕事と言った?
「ああそうそう。三人にはまだ言ってなかったけど、今から新しい仕事だよ!早速四人で頑張ってね!」
グッとポーズをしながら二階堂さんはニッコニコで言ってきた。……ウザイ。
「今からって………、いつも急なんですよ二階堂さんは………」
レイは少し苛立った表情で二階堂さんにそう吐き捨てた。いや、無理もない。二階堂さんに出会ってしばらく経つが、この人はしばしばいい加減なところがある。
「いやぁ、すまない。うっかり言うのを忘れてたよ。まあ今言いに来たとこだったんだけど、そしたらちょうど光助もいたからさ」
そんな大事なことをうっかり忘れないでほしい。
すると二階堂さんは続けて仕事の詳細を伝えてきた。
「今から行ってもらう今回の仕事先は中学校だ。ここからだとちょっと距離があるから、今から行くと夜になるんだけど、まあそこはしゃーないね。で、そこの学校なんだけど、なんでも、校舎内で生徒が一人行方不明になっているみたいだ。そして、うちの事務処理班の確認によると、悪霊が二体、住み着いているらしい。おそらくその悪霊たちが原因だろう。そこで、君たちに早速除霊しに行ってもらいたい。それもあってその学校にはあまり騒ぎを表に出さないように上手いこと言って別の事情を説明して休校中にしている。君らの仕事は悪霊二体を除霊し、生徒を救出すること」
悪霊二体の退治と生徒の救出…………。なかなかに大変そうではあるけれど、俺たちならきっと大丈夫。しっかり修行もやっているし、前よりも格段に強くなっているはずだ。それに、光助くんも新しく入ったことだし心強い。
俺たちは二階堂さんの「じゃ、よろしくね!みんな力を合わせて頑張って!」という言葉に力強く頷き。早速その学校へと向かうことにした。
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