第23話 二階堂家

 〝二階堂家〟。二階堂さんの話を聞くと、二階堂家は鎌倉の時代より存在していた一族で、鎌倉時代から現代まで、霊媒師の業界内でに強い霊媒師一族と言われているらしい。鎌倉時代から凶悪な悪霊を多く退治してきており、それは現代となってもなお変わらない。

 二階堂さんは現代の二階堂家の当主であり、つまりは二階堂家の中で一番の実力者だ。もはや二階堂家は今も昔も日本の英雄とも言える。それにより二階堂家は二階堂さんもそうなのだが、国からの除霊関係の仕事が必然的に多い。


 それが〝二階堂家〟。


 だからその一族の一人である光助くんも、かなりの実力者なのだろう。

 ちなみにいうと二階堂家の本殿は二階堂屋敷ではなく、別のところに本殿はあるらしい。



 二階堂さんからの仕事を受け、俺たち四人は目的の学校まで向かうため、地下鉄を乗り継いだ後、バスで学校まで向かっている。

 今はもう午後七時だ。空もだいぶ暗くなっている。バス内の乗客は少なく、俺たち以外に二、三人いるくらいだ。俺たちは横に並んで座席に腰掛けている。光助くんは意気揚々に俺たちに話しかけてきた。

 「先輩方は霊媒師になってからどんくらい経つんすか?なんか武勇伝みたいなのないんすか?なんかやばいくらい強い悪霊ぶっ飛ばしたとかそういうの!あっ、学校はみなさんどんな感じなんすか?楽しいっすか?俺は最近学校の課題が多くてまいりますよお」

 この子すごい喋るな。まぁ元気があっていいことだ。俺は質問に答えた。

 「俺は最近霊媒師になったからあんまりそういうすごいことはないかかな。俺の学校も課題は多いよ。特に数学とかがさ。ほぼ毎週でるんだよ」

 俺のセリフに光助くんは何か引っかかったような顔をした。

 「えっ!?ってか最近霊媒師なったばっかなんすか!?どんくらい前?」

 「まあだいたい今年の夏に入る前かな?」

 「じゃあ俺より全然後輩じゃないっすか!俺はガキの頃から悪霊払い続けてきましたからね。まっ!年は飛鳥先輩の方が上なんで敬語とかはいいっすよ!」

 とグッドサインを送ってきた。なんか複雑だな。

 一連のやり取りを聞いて、レイが眉間を寄せる。

 「お前ら少しは声のボリューム落とせ!公共の場だぞ………!」

 レイが小声でそう言う。

 「えぇっ!?俺は別に大きな声は出してないよ!?」

 俺はレイの注意に俺も含まれていることに納得がいかなくなり、すぐさま反論した。その勢いでつい声が大きくなってしまったが………。

 「だから静かにしろって!公共の場だっつってんだろうが!!」

 レイもキレ気味にさっきのセリフを繰り返す。そういうレイこそ声がでかい………。

 (ああ、みんな声大きすぎぃぃぃぃ……!周りの人達の視線が痛いよぉぉぉぉ……!)

 静原さんは自分たちが周りの乗客から迷惑そうな視線を向けられていることに気づき、手と手の先を合わせて気まずそうに肩を縮こまらせていた。

 すると、レイは落ち着きを取り戻し、光助くんに言葉を投げかける。

 「………ていうか、光助。お前、なんなら俺より除霊の経験多いんだな。俺は高一で二階堂さんに拾われて霊媒師になったから」

 そうか、たしかにそれなら光助くんがこの中で一番霊媒師の経験が長いのか。静原さんも俺が入った後にやってきたわけだし。

 

 プシュー。


 かれこれしているうちに時間が経ち、やっとバスが止まり、目的地近くのバス停まで到着した。

 

 それから俺たちはしばらく歩いて、目的先の中学校の校門前へと着いた。あたりはもうすっかり夜で、目の前に建つ校舎はどこか禍々しいオーラを放っている。

 「ここが生徒が行方不明になっている学校かぁ。たしかに、霊力は、感じるね………」

 禍々しい雰囲気の校舎を前にして、俺が少し緊張気味に言うと、レイが口を開く。

 「そうだな。確認だが今回は悪霊退治にプラスして校舎内での行方不明生徒の救出だ。いいな?」

 レイの話が終わり、次に光助くんが提案をする。

 「悪霊は今回中に二体いるんすよね?二手に分かれて探して倒すってのはどうです?」

 光助くんの提案に、レイは賛同した。が、俺は少し唸る。

 「確かに………、そっちの方が効率は良さそうだけど、二手に分かれて戦力をバラバラにするよりも、一つに固めた方がいいんじゃないかな?そっちの方が戦う時に有利だと思うけど………」

 俺の意見に静原さんも賛同する。

 「私も………、火野くんの意見に、賛成です………。そっちの方が戦いやすそうだし………」

 静原さんがそう言うと、レイは少し否定気味に返してきた。

 「いや、それもありだが何より今回は行方不明者の救出もある。生死がわからない以上あまり時間はかけたくないところだ。多少戦力をばらけてでも、二手に分かれて行動した方が効率がいい。それに、何かあれば携帯で連絡し合えばいいしな。悪霊を見つけたらお互いに連絡し合ってその場に向かう、と言った感じでどうだ?」

 レイが携帯を出しながら言う。すると光助くんが否定派派の俺たちをくすくす笑いながら煽ってくる。

 「あっれー?もしやお二人はビビってるんすかー?怖いんならここに残ってもらっていいんすよお?まっ、悪霊二体の退治に人の救出くらい、俺一人でも十分すからね!」

 随分と自信に満ち溢れた様子だ。それにしても、静原さんは別になんでもいいが、自分が年下の子に煽られては俺のプライドも黙ってられない。俺はすぐさま反論した。

 「べっ、別にビビってるわけじゃないよ!?ただ、みんなで固まった方がいいかなって思っただけで!ほら!ホラー映画とかではバラバラに行動するのは死亡フラグでしょ!?」

 静原さんも図星をつかれたのか冷や汗ダラダラでひたすら首を上下にブンブン振って頷く。

 「いや死亡フラグて、結局ビビってんじゃないっすか」

 「いやだからそういうことじゃなくってさあ!」

 と、俺はまだ反論する。いや、静原さんもだろうがたしかに内心はビビっている。

 するとレイがイライラした表情で俺たちの問答を遮り、急かす。


 「あーもういい!時間の無駄だ。行くぞ!」

 「うっす!」

 レイが先導し、光助くんもそれに続いた。

 「ちょっ、ちょっとまって!置いてかないでよ!」

 俺も後に続いた。

 「まままままままま待ってくださいよお!私も行きますぅ!」

 静原さんもそれに続く。





 そして、四人が校門に入るその様子を、夜の月明かりに照らされた近所の高層ビルの屋上から見下ろしている、二人の人影があった。

 「あの白いパーカーに黒い髪をした男、あいつが黒龍石を持っていたっていう火野飛鳥ってやつか?」

 一人の黒髪ショートヘアで全国有数の有名エリート進学校の制服を着た青年が、もう一人の男に問いかける。

 そのもう一人の男はグレー髪にマフラーのようなものを巻いた男だ。

 そのグレー髪の男も上から飛鳥たちを見下ろしながら返答する。

 「ええ。まあ、今は二階堂光太に黒龍石を委ねているみたいですがね……。ですが、この先二階堂光太から黒龍石を奪うとなると、あの四人との戦闘も避けられないでしょう。観察はしておいて損はない」

 グレー髪の男は片手で口角を上げ、ニヤリと笑う。


 その謎の二人組。制服を着た青年の名は神堂真。そしてもう一人、グレー髪の男の名はカゲロウ、怪異もとい悪霊である。


 



 〝飛鳥たちの戦いの裏で密かに、前代未聞の悪意が動こうとしている………。〟

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