概要
ぼくは金魚を溺れ殺した。
すこしばかり前のこと、ぼくが金魚の模造品について口にしたことを、わずかながらに憶えている…。
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- ★★★ Excellent!!!おそるべき芸術家の意匠
旋回する金魚。
総身にほどこされた豪奢な朱いろの刺青、艶冶なたてがみ、物憂げに舵取りをする胸鰭、そして天人の御引摺りのように水中をひきずって裾広がりに消えゆくばかりの尾鰭。半ば腐りかけているような美しい白桃色の膚。たなびいている羅綾が彼女の躰からじかに生えているということの残酷な美しさ……。水のたすけなくしてはありえないこんな脆美を前に、少年は悶絶している。なぜ金魚はこんな様子をしているのだろうか。誰がそれを許しているのだろうか。少年はその脆い美に感服しつつ、自分がその美しさに関わるだけの余地をさがしているのではないか。一度は油絵具でえがかれた金魚の写像を引裂いて、手のひらで丸めて握りつ…続きを読む