第5話 結

 三冊まではさらりと出てきた。残り二冊が浮かんでこなかった。あれかな、これかなと思い浮かべると、嘔吐に似た胸の粘りを感じる。だから、きっと違う。


 火葬が終わったと言う。骨を拾う。私は細かい骨を数個拾うばかりだった。骨箱の蓋が閉じられた。静粛した親戚たちの最後尾で火葬場を出ると、もう雨は上がっていた。


 四冊目、五冊目を決めるのは今でなくてもいいのだろう。今後出会う中にあるのかもしれないし、これから整理する実家の書架に埋もれている中にあるのかもしれないから。

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五冊 金子よしふみ @fmy-knk_03_21

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