第7話
始原
大雑把に言えば事の始まりを意味する
迅は昔、友人と酒盛していた時の事を思い出す
『そう言えば、お前たちはなんで魔法使いじゃなくて魔術師なんて下げた呼び方してるんだ?』
『は?ああ、そうか・・・お前は魔法が使えないもんな』
迅がこの質問をしたきっかけは些細なことだった、目の前の友人、少なくとも迅が知っている魔法を使える者は全員自分たちを魔法使いとは名乗らず少し下げて魔術師と名乗っていた
迅自身も普段なら気にしない事だったが、酒も入ったことで口を軽くし、つい聞いてしまったのだ
『なんて言えばわかりやすいか・・・そうだな・・・』
友人は頭をひねりながらどう説明するのかを探していた、迅はその様子を酒を飲みながら待つ
少しして友人は懐から煙草を出すと迅には聞き取れない言語を出す、すると指先に火が灯り煙草に火を点けた
『今やったのを簡単に言えば油の代わりに魔力を、火種の代わりに詠唱を、そして火を起こしたってのがアタシらが使っているものだ』
そう言い一服すると友人は続きを喋りはじめる
『前にも言ったが魔法を使えるのは前提として魔力を持っていなければならない、そして魔力は努力なんていうものでどうにかなるものじゃなく先天的、
酒瓶を持ち上げの喉を潤す友人、そして再び話し始める
『けふっ・・・だが魔力を持って生まれてもそれを十全に使えるわけじゃない、そこからプラスαの才能、努力などで初めてまともに扱える』
いつの間にか1本目の煙草は終わり、また指先に火を点け2本目を吸い始める友人は深く吸うと上を向き煙を吐く、その姿は若干憂鬱そうに見えた
『そして・・・実をいうとアタシらが使っているのは魔法じゃない』
『・・・どういうことだ?』
『そのまんまの意味さ・・・アタシら魔術師が使ってるモノは魔法なんて大層なもんじゃない、ただの手品レベルだよ』
友人は再び指先に火を点けると立ち上がり近くにあった蝋燭に点ける、すると蝋燭はアロマキャンドルだったのか部屋の中に香りが漂い始める
『魔法の一番の利点は今みたいに何もないところにないかを出す、何かを起こすことができることだ。言葉だけ聞けば確かにすごいように聞こえるが・・・』
友人は再び煙草の煙を深く吸い、ゆっくりと吐くとと今度は懐からライターを取り出し点け、消すとテーブルに投げる
『ぶっちゃけ、現代技術と同等、下手をすれば負けている、例えばさっきみたいにアタシが点けた火だって消耗品ではあるもののライターでも使えばすぐだろ?』
迅は投げられたライターを見て、友人を見ると首を縦に振り同意する、確かにライターを使えば自分の魔力を使わず詠唱なんて手間もいらず火を点けられる。
『さて、ではアタシたちが使っているのが魔法でないならば本当の魔法とは何なのか?・・・その答えは簡単、現代技術では不可能な、そして
そういうと友人は煙草を灰皿に置き迅を見つめる。その眼は真剣そのもの、今まで酒を飲んでいたのにお互いすでに酔いは覚めている。
『始原の魔女、最初で最後の魔法使い、魔法の祖、いろんな異名を持っているかつて存在した、名は分からず、姿も分からず、ただ魔法というものを造り出した人間、アタシらはそれが残した文献を血が滲むように必死に解読してその魔法を真似ている二番煎じ、それ以上のことはできない、だから魔術師と名乗っている』
魔術と呼ばないのは昔の名残だ、と最後に補足し友人は口を閉じようした時、何かを思い出したかのように友人は口を開いた。
『ちなみにだが、始原の魔女は今もどこかで生きているらしいぞ?ま、魔法が使えないお前には縁がないだろうがな』
友人はそういうと酒瓶を持ち上げ再び酒盛を始める。迅も今までの説明で納得し、酒盛りに付き合うことにした。
そんな会話をしたのが数年前、その時の記憶は既におぼろげになっていた。
そして今、始原の魔女と名乗った目の前の少女、アイリスはその朧気になっていた記憶を呼び起こし、そして周りから自分たちの音と認識を乱し、少なくとも迅には理解できない事象、現象を簡単に起こした。
「・・・それで?始原の魔女様が魔力を持っていない俺に一体何の用なんだ?」
虚勢を張るかのように冷静を装い迅は笑みを浮かべながらアイリスに問いかけるが冷汗は止まらない
アイリスはそれを見透かしているように、まるで小動物を見るかのように笑みを浮かべる
「あら?疑わないのね?私が貴方を
「・・・」
確かに、アイリスが始原の魔女と
だが迅がアイリスから感じ取っている雰囲気、気配ともいうべきか、それらはただの少女から感じられるものではなく、リーリスと対峙した時のような絶対に勝てない、近づいてはいけない、逃げろと脳内が煩く響く、そんな存在だと本能が訴えかけてくる
「最近リーリスに会って近々知り合いが来ると忠告された、そしてお前が現れた。それだけで十分だ」
迅がそう答えるとアイリスはつまらなそうな顔をするがすぐにまた笑みを浮かべた
「へぇ~?リーリスがわざわざ言いに来るなんてよっぽど貴方の事気にいったのね?、益々興味が湧いてきたわ」
そういうとアイリスはいつ注文したのか分からない新しく来たパフェを口に運ぶと、手を軽く振る
「・・・!?」
するとどうだろう。今までいた店内からまるで切り取ったかの様にテーブルと椅子、迅とアイリスがそのまま特撮の現場のような更地のような場所に移動した
「そんなに驚かなくても大したことじゃないわよ、ただ空間座標を変えただけよ。ああと4、50年もすれば
大したことじゃない様に言うが、それは俗にいうワープなのでは?と迅は訝しんだ
そんな迅をよそにアイリスはクマのぬいぐるみを振ると身長に不釣り合いな豪華な装飾を施された杖に姿を変える
「さて、それじゃあ食後の運動と行きましょうか」
「っ!結局こうなるのかよ!!」
最近聞いたことのある死の宣告、アイリスは空中に浮くと迅に杖を向ける
「リーリスに見せた貴方の価値・・・私にも見せて頂戴?」
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魔法に関しては結構無理やり感は否めません
次回は戦闘描写を書く予定です
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