第5話

『気を付けなさい、中には私よりめんどうなのがいるから』


自分が面倒な女だと自覚しているような言葉を残しラーメン屋を後にしたリーリスと会ってから数日が経ち、迅はいまだ休んでいた。

迅自身もこんなにも休むつもりはなかった、だがリーリスが言った知り合い達に会わない為に仕方なく引き籠っているのだ。当然休み過ぎれば体は鈍っていく、しかし外に出ればリーリスに出会った時の様に面倒な事になる確率が上がっている今、不用意に外に出るのは危険だった。


「はぁー・・・」


だが、いつまでも引き籠っているわけにもいかない。

意を決して迅は外に出る事にした

外はまだ日は高く、携帯を見ると正午を過ぎたばかり、動いてないせいでそこまで腹は空いてはいないがそう確認したら不思議と腹が空いた、買い物ついでに何かしら適当な店にでも入ろうと思い足を動かそうとしたが・・・


クイっと誰かに裾を軽く引っ張られた


「!?」


その 大したことはないだが迅は驚愕してしまう。

これが一般人なら驚かないだろう、だが迅は狩人だ、自然と周りの気配を感じられる

そんな迅が全く気付かず、ましてや背後を取られたのだ、驚かない方がおかしい


まあ、一般人でも意識外から服を引っ張られれば驚くだろうが・・・


ともかく驚いて動けない迅をよそにまた裾を引っ張られる。迅はゆっくりと後ろを振り向く。するとそこには白髪の長髪を風に揺らし、育ちが良さそうな綺麗なワンピースを着た少女がくまのぬいぐるみを抱え立っていた

まったく身に覚えのない子供、そんな子供に背後を取られるなんて休みすぎたか?と自分を心配したが、次に少女から発せられた言葉に迅はさらに驚愕した


「あなたがリーリスの言っていた狩人?」


「・・・!?」


目の前の少女から出た言葉に迅は驚きを隠せない。がそれと同時にこの少女がなんなのか分かってしまった


「・・・お前がリーリスの知り合いか・・・?」


そう、先日忠告されたリーリスの知り合い、そして迅は目の前の少女が化物だと確信し認識を改めた


「うん」


少女は短くそう返事をするとジッと迅を見つめる。その目はまるで観察するようなものだった


「・・・なんだ?」


背後を取られ逃げるのをあきらめた迅は少女に声をかけるが少女はジッと迅を見つめるだけで何も答えない。

だがその見つめ合いは長く続かず少女は口を開けようとした時


ぐぅ~~~と少女の腹が可愛らしく鳴った


少女はその音が恥ずかしかったのか頬を赤く染め裾を握る手をさらに強めた。

2人の間になんとも言えない空気が漂う、迅はどうすればいいのか分からずただ立ち尽くす

そして無情にも再び少女の腹は鳴り、今度は体を震わす

微妙な空気に迅はため息をつくと、意を決したように口を開く


「・・・とりあえず何か食べるか?」


迅の問いに少女は小さく頷くと迅は裾を掴まれたまま少女と歩き出した


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