第4話
美人は何を着ても美人とはよく言ったものだ
それがたとえ学生のような芋っぽい真っ赤なジャージだろうとリーリスの美貌は変わらず美しく、店内の人間は皆、手を止めリーリスに見惚れている
だが当然、迅だけは違う
リーリスを見た瞬間、勢いよく残りを啜り、逃げるように立ち上がろうとするが
「まあ、ゆっくりしなさいよ」
ひらりとリーリスの手が肩に乗る
「!?」
するとどうだろう?どれだけ迅が足に力を籠め立ち上がろうとしても動かない、まるで全身に重りをつけられたような感覚に迅は縛り付けられたかのように椅子から動けないでいた
「ごめんなさい、濃厚豚骨ラーメンとライスのセット、あとビールを頂戴」
「へ?・・・ヘイ!」
リーリスは慣れたように店員に注文をする。流石に注文が入るとリーリスに見とれていた店員は我を取り戻すと調理を始め、それを皮切りに他の人間も少しずつ動き始める
その中で迅だけはいまだに動けないでいた。
いや動けずにいたといったほうがいいだろう、そんな迅を見てリーリスは嬉しそうに笑うと肩に乗せていた手をゆっくりと退ける
「・・・すみません、餃子追加で」
またしてもリーリスから逃げることができない状況に陥った迅は、最近多くなった諦めを感じ、追加の注文を頼んだ。
そんな迅を見てリーリスは嬉しそうに笑うと肩に乗せていた手をゆっくりと退ける
「・・・なんでここにいる」
「知らないの?吸血鬼はラーメンが好きなのよ」
違う、そんなことを聞いているわけではない。ラーメンが好きなんて、そんな吸血鬼の好みを聞いているじゃない
「どうして、ここにいるのか聞いているんだ、大体なんだ?その恰好は・・・」
「決まってるじゃない、あなたに会う為よ、恰好はあの時みたいな服は目立つじゃない?・・・あ、ラーメンが好きなのはほんとよ?」
それにしたって他の服もあっただろう、なぜよりにもよってジャージ、しかも真っ赤な、容姿も相まって、ある意味目立って仕方ないのだがそこまでして自分に会いに来るとは一体なにが目的なのだろうか?
「・・・どうする気だ」
「別になんにもしないわ、本当にただあなたとおしゃべりがしたいだけよ?それに貴方の名前を聞いていなかったし」
そういって笑うリーリスからは確かに悪意といったものは感じられない、それは事実だった。危害を加える意思はないようでその目も真摯なものだった。それならば安心だ・・・とこれが人間であったならば思うかもしれないが相手は吸血鬼、何を企んでいるのかわかったもんじゃないと警戒するのは当然だろう
「それで?名前は?」
「・・・」
迅は名前を言うのを渋る、たかだか名前程度教えても普通ならいいはずだ、だが相手は化物
古来をよりをこの業界で化物には名前を教えるということは自殺行為のようなものだ、その理由は
「呪われるから教えない」
というわけだ。
迅が言ったことは決して大げさなことではない、この世界にも魔法や呪術といいものは存在し、数こそ少ないがそれを扱う者いる。迅は使えないが
そして呪い、呪術というものは名前、真名や対象の一部を手に入れれば呪をかけられる
もちろん普段からそれに対抗できる物を持ち歩いてるが、
「安心して、私、そんな
だがリーリスは迅のそんな心配をあっさりと否定した。しかしそれはリーリスが勝手に言っているだけ、信用、信頼が足りえない
「それにそういうのは案外フルネームじゃなければ効果は薄いでしょ?大体殺そうと思えばいつでもできるんだし・・・ほら~もったいぶらず教えなさいよ」
いつの間にか来ていたラーメンとライスをつまみにビールと飲みながらリーリスはダル絡みするように迅に寄りかかる。残念な美人の完成だ
「(めっちゃいい匂いがする)」
ラーメン屋とあって様々な匂いが充満している。だがそんな中で寄りかかられ呼吸をするとリーリスから甘い匂いがする。あと服越しだが柔らかものが当たっている。
芋っぽい赤ジャージを着ているくせに
「ほら早くー」
「・・・迅だ」
迅はリーリスの押しに負けた。確かにそんな面倒なことをしなくてもリーリスは迅を殺せる。
そしてここで名前を教えないのを続けたら、下手したら店内の人間を人質にとるかもしれないという考えが過ぎった為、迅は仕方なく、仕方なく教えた。
「迅・・・迅・・・うん、いい名前ね」
「・・・」
リーリスは名前を聞き、覚えるかのように何度かその名を口にし迅に笑みを向ける、不覚にもその笑みに迅はドキッとしてしまった迅は誤魔化すように正面を向き餃子を食べる
その迅の様子がおもしろかったのかリーリスはまた笑う。
しばしの沈黙、正確には食事の音だけが2人の間に流れる
そしてリーリスが食べ終えたのを確認すると迅は口を開く
「それで?いい加減教えてくれないか?」
「なにを?」
肝心のリーリスはとぼけた様に首をかしげる。
「なにを、じゃないだろ、俺に用があって来たんじゃないのか?それとも本当にただおしゃべりに来ただけか?」
リーリスは迅の言葉を聞き、顔を横にそむけると深いため息をつくと迅の方へと再び顔を向ける
「半分は本当に話をしたかっただけよ?」
「・・・もう半分は?」
すでに嫌な予感を感じてはいる、だが聞かないことには始まらない。
「・・・実を言うと貴方のこと、知り合い達に喋ったの・・・」
「・・・・・は?」
リーリスの口から出た言葉はとても考えられない予想外な物だった。
「ちょっとした世間話だったのよ?でも話しているうちについ、ね?」
「・・・つまり?」
その先を聞きたくはない、リーリスの知り合い、それは当然他の化物を意味している。申し訳なさそうな素振りを見せるがリーリスの口から無慈悲に続きが紡ぎだされる。
「・・・多分、近々その知り合いが貴方に会いに来るかもしれないわ」
「・・・は?」
再び出た言葉が妙に店内を木霊した
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進まねぇな!?
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