カードをめくる
山札からカードをめくるたびに、
山札の残り枚数を気にしてしまう
ぴったりときれいに重なった山札は、
僕からみるに、ただ一枚のようでいて、
あるいは多くの重なりをもっているようだ
めくってみるまではその先に未来があるのかなんてわからないし、
ただ一枚しか残っていなくとも、
めくる瞬間までは気づくことができない
長くめくる作業を繰り返していると、
その先があることを当たり前に感じてしまう
かつては最後の一枚かもしれないとおびえ、
道の先が途切れていることを不安に感じ
いつまでも手を進めることができないでいたのに
いつのまにか、ひとつひとつの行為が作業と化して
動じる心も失われてしまう
カラスがかーとなくから、
ハトを追いかけて笑っていられるから
山札の続きはそんなありきたりの景色でよかったはずなのに
老いていく体は妙に先を急ごうとするし
カード一枚一枚の価値を、品位を貶めてしまう
僕が望むところではないと弁明しても、結果は同じ事だ
表に出力されるものがこの世のすべてで
いかに高尚な考えも、重厚な思いも
このカード一枚の厚みには到底及ばない
手札に加えて、手持ちが増えてくると、
どうにもわずらわしさを感じてしまう
山札一枚一枚の価値以上に、手札の一枚一枚が軽薄だ
重たい荷物を下ろすように、路辺に置いて
いつしか猫が持ち去ってしまっても気づかない
窓から舞い込む木の葉が悪さをする
混ざり合って、溶け合って意味を奪っていく
減った分増やしていかないと枯渇してしまう
増やすべきタイミングは、いかに考えようとわからない
僕にできることは限られていて
ただ、大切にすることができなかっただけ
あまりにも軽やかな言葉の数々は
正当な手続きを経て得られたものではないけれど
机の上に残っているのは、
落ち葉か、あるいは押し花か
手で触れてしまうと儚く朽ちてしまいそうで
いつまでもめくることができずにいる
馬鹿
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