第35話 気風がいい
そして続けた。
「これが全部って訳じゃないんだ。まだまだ
その日の
「それでは、あっしもこの
義三は、佐吉と富五郎に
「ああ、気付けて帰れよ。今日は無尽講落とした金持ってるんだからな。地震以来何かと
富五郎が声をかけたのだ。実際、地震以来、強盗の類が後を絶たなかった。富五郎ならずとも昨今の夜道が心配なのは誰も同じだった。
「へい、分かりやした。足にはちょいとばかし自信があるんで、すっ飛ばして帰りまさぁ」
義三は、自らの
「四代目、本当に
二人っきりになって、改めて富五郎が聞いてきた。富五郎は、佐吉の本心を確かめたくて最後まで残っていたのだ。
「ああ、本当にいいんだ。今日言ったのは
佐吉は、
「四代目が
それでも、富五郎は何か言いたげであった。
「富五郎さん、おいらは、人にはもって生まれた『
「………」
富五郎は、黙って聞いていた。
佐吉は続けた。
「実は、このところの評判で普請の依頼がたくさん来てるんだ。皆断ってはいるんだけど、
佐吉は、思いのたけを語りながら妙な
「納得しやした。そこまで考えての事でしたら、あっしはもう口を挟みません。それにしても四代目は、やっぱり江戸っ子だ。
富五郎は、初めて
「富五郎さんの『気風がいいや』ってのには、いつもやられちまうね」
富五郎は、人を
初夏の日の出は早い。外は
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