第34話 無尽講
先月は、佐吉が
「無尽なんて気の利いたようなこと言ってるけど、要するに飲み会なんだよ。いい気なもんね」
付き出しにする
「皆んな、無尽の前にちょいとおいらの話を聞いてくれ」
十二人名全員が集まったところを見計らって、佐吉が切り出した。
すでに酒を飲んでいた者たちも
「これは先代が残しておいてくれたもんだ。見てやってくれねぇか」
紙の束は分けられて、それぞれがその
やがて、
「こいつぁ
一人が云うと、
「こっちはお宮さんだ。これもでけぇぜ」
また一人が声を上げた。
「ああ、そっちのお寺は奈良の薬師寺さんだ。それと、そっちのお宮は京の八坂さんだ」
佐吉は事も無げに答えた。
「………」
座は沈黙した。
「じぁ、これは何処ですかい?」
富五郎が、おそるおそる尋ねて来た。
「ああ、そいつは奈良の法隆寺さんの図面だ。もちろん、昔描いた本物じゃねぇよ。でもほんんど
また、佐吉は事も無げに答えた。
座は大騒ぎになった。
「ですけど四代目、こんなの俺たちに見せちまっていいんですかい」
義三と云う名の若い者が、佐吉を見ながら、「信じられない」、と云う風の顔をして云った。義三は先代の最後の弟子で、豊三が倒れた後は富五郎のもとで修業をし、年季が明けて先年独立したばかりだった。勉強熱心で、腕も
「ああ、いいんだ。おいらも色々考えたんだけどな、どうも先代のような
佐吉はそう云うと、腕を組んで
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