第22話 ストゥーパ
浅草寺の総建て替えは、まずは塔から始まった。大きな寺に行くと五重塔とか三重塔が建てられていることがある。これらの塔は、寺の装飾的なものだと思われるきらいがあるが、実はそうではない。『塔』、サンスクリット語では『ストゥーパ』と呼ぶが、仏教の世界では、仏陀の遺骨を納める最も大事な建造物であり、これなくして寺院は成り立たないと云っても過言ではないものである。仏陀の遺骨と云うと、そんなものが未だにあるのかと疑問を投げかける向きも多いのではないかと思われるが、とにかく、仏教の世界ではそういう事になっているのであって、ここから先は、
佐吉が五重塔を真っ先に建て始めたのは理由がある。塔というものは、
佐吉は、豊三の残してくれた法隆寺や薬師寺などの塔の図面を元に、新たな工夫をいつか加えて何枚か図面を引いてみた。江戸は沼地を埋め立てた上に築かれた町なので、地盤が
五重塔で最も重要なのは芯柱である。この芯柱は大きく分けて三種類のものがある。古い方式から紹介すれば、まず、芯柱を土中深く埋め込んで立てるやり方、次に、礎石の上に載せてやり方、そして、上層部から吊るして芯柱を宙に浮かすやり方である。法隆寺のものは最も古いものであり、芯柱を深く埋め込んで立てる工法をとっていた。この方式が地震に対してもっと強いという事は歴史が証明している。
だが、佐吉は、この江戸の地に一番合っているのは芯柱を
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