第9話 慇懃無礼
それからしばらくして、佐吉はお美代に梅二の事を訊いてみた。お美代の云うには、梅二は佐吉とお美代の事をどうも誤解していたようなのだ。それは、お美代が本当に好きなのは自分なのだが、父親の豊三に言い含められて佐吉を婿にとる、云う勝手な思い込みだった。
梅二に考え直すよう迫られたお美代は、きっぱりと、
「あたしは佐吉兄さんが好きなんだよ。大好きなんだ。どうしても
と云ってやったというのだ。
お美代も江戸っ子で、そういう点ははっきりしていた。佐吉は
二度目に会ったのは、それから二年もしない秋、
本殿の
「佐吉兄さんじゃないですか?」
と呼ぶ声がした。振り向くと梅二が立っていた。
「やっぱり佐吉兄さんだ。お久しぶりで、ご
そう云うと梅二は軽く会釈をした。梅二はこざっぱりとした
「この前はどうもすいません。勘弁してやってくださいまし。何分へべれけに酔ってまして失礼なことも云っちまったようで、まことに申し訳ござんせん」
梅二は何度も頭を下げた。
「別に気にしちゃいねぇよ。それよりこちらのお人は?」
佐吉は、梅二の陰に隠れるようにして、
「あっ、こりゃ申し遅れました。あっしの女房なんでして、ほんのひと月ほど前に所帯を持ちまして、と云っても、
「馬鹿野郎、兄さんと同じだけが
「へへ、どうも」
「とりあえず、よかったな。おめでとさんよ」
「どうもありがとうござんす」
梅二はそう云うと、女の方を振り返って、
「おい、お前からも
と云って、女を前に出した。
女は、
「お栄と申します。宜しくお願いします」
と云うと、すぐにまた梅二の後ろに下がった。
「すみません、まだ
確かに、女はまだ十五かそこらであろう、その顔には幼さが残っていた。
「仲良くやるんだぜ。早く子供作れよ」
そう言って別れた。それだけの事だったが、梅二がなんとか立ち直っているのだけは分かった。梅二が来ている着物も上等の物だった、連れていた幼い嫁の身なりは
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