第4話 生垣の向こう
「佐吉、そろそろ返事を聞かせてもれぇてんだがよ。なんかお美代に不足でもあるのかい」
昼飯の弁当が終わって一服して居る時に、豊三が訊いてきた。豊三は、職業柄、声が大きい。佐吉は
「いや、不足なんか、あっしには
佐吉は小さな声で答えた。
「じぁ、
豊三は
「お美代ちゃんの気持ちも大事だと思うんで、あっしなんかじゃお美代ちゃん、物足りないじゃねぇかと……」
「馬鹿野郎、そんな事考えてたのか、お美代の事はな……」
そこまで言った時、
「へい、ただいま参りやす」
豊三はいなくなった。ふと気付くと、豊三のいた場所に梅二が立っていた。
「佐吉兄さん、風邪を引いたみたいで気分が悪いんです。申し訳ねぇんですけど、今日のところは先に帰らせてもらいやす。
梅二は、そう言い残すと道具を抱えて裏門から出て行った。
先ほどの会話は、梅二に聞かれてしまったのだ。
梅二は、次の日もまた次の日も出て来なかった。よく々考えてみると、梅二はお美代に惚れていたのかもしれない。
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