第93話

「チビネッ!!チビネッ!!今日が楽しみすぎて、俺寝られんかったわっ!!」




異様なテンションの蓮は俺が睨んでることに気が付かない。



コイツ……俺が居ることすら見えてねぇんじゃねぇか?




「ハイネちゃん、おはよ」



「おはよー、桐子」




蓮の後ろから、ひょっこり顔を出した桐子ちゃん。



少し落ち着いたが、相変わらずのゴスロリファッション。




「おはよう、八雲さん」



「おはよう、桐子ちゃん。今日はハイネをよろしく」




挨拶をした後、キョロキョロ何かを捜してる。




「八千流ちゃんとハイドくんは?」



「八千流とハイドは?」




蓮と桐子ちゃんの二人が声を揃えて聞いてくる。



俺とハイネは顔を見合わせて笑った。




「今は寝てる」



「……そっか」



「帰りに会ってやって」



「うん」



「おう!!今日はあの子らの物もたくさん買うぞーっ!」



「「「起きるっ。起きるっ」」」



「……すまん」




俺とハイネと桐子ちゃんで蓮の口を塞ぐ。




「蓮」



「あ?」



「頼むぞ」



「おう。任せろ」




真剣に頷く蓮に頷き返し、ハイネを見る。




「なるべく早く帰るからね」



「俺達は大丈夫だから、ゆ……」




ゆっくりしてこい。って言おうとした。



だけど。




ハイネの顔が近付いてきて……チュッとキスをされる。



触れるだけの優しいキス。




「ハ……イネ?」



「子供達だけ、ズルい。あたしだって八雲さんと一緒に居たいんですっ!!」



「ハイ……」



「じゃっ!!」




脱兎のごとくハイネが出ていく。




「じゃあな」



「いってきます」




ニヤニヤする二人も見送って……




「~~っっ」




本当に、あの子はーーっ。



行かせるんじゃなかった。



こんなことなら家族四人で居れば良かった。




後悔しつつも、ハイネの本音が嬉しくて笑う。





さぁ、今日はパパとして頑張るか!!





可愛い我が子達の元へ戻りながら、夜はハイネとゆっくりしようと固く心に誓う。

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