第73話
雪代さんに……??
双子が差し出したのはシガーレットチョコとミントガム。
うん、絶対に二人が買うことのないお菓子だ。
「たくさん、おこじゅかいをありがとう!!」
「かえったらいっしょにたべよう!!」
ニッコニコで二人が笑う。
「お……前達……少ない小遣いで……」
十分多いですっ。
「小遣いで、俺の分も……??」
「「ユッキー??」」
言葉を詰まらせる雪代さん。
泣いているのだろうか?
お菓子を大事に受け取った雪代さんは俯いてしまった。
そんな雪代さんの頭を八千流とハイドが撫でる。
あたしと八雲さんはその光景に二人で微笑んだ。
こんなお礼をも出来るようになったんだね。
日々成長だ。
「では、いいですか?二人共」
「「はいっ!!」」
雪代さんも落ち着いた所で、双子に問いかけると、すっかり泣き止んで元気良く手を上げた。
「凛さんに言ってあるから、"シャーウッド"に着いたら2階のお風呂に入って下さい。雪代さんと一緒に」
「え!?」
「「はいっ!!」」
狼狽える雪代さん、嬉しそうな双子。
「大丈夫ですよ、出来ないことは手伝ってって、言いますから」
「そ……そうか」
八雲さんの言葉に真剣に頷いてる雪代さん。
その雪代さんはさっきので結構びしゃびしゃに濡れてしまっている。
このままでは風邪をひいてしまう。
双子達も雨合羽を着ているとはいえ、今日は外に居る時間が長かったから、冷えてるし。
そんな3人が一緒に入れば一石二鳥ってもんだ。
「お風呂から出たら、さっき買ったお菓子を食べていいからね。雪代さんと一緒に」
「「はいっ!!」」
双子の目が輝く。
「でも今日の夜ご飯は皆で食べるんだから、お菓子を食べ過ぎないように」
「「はいっ!!」」
「ん。じゃママはパパと夜ご飯の買い物に行ってくるね。雪代さんとちゃんと手を繋いで」
「「はいっ!!ユッキー!!」」
二人はしっかり頷くと手を繋ぐべく雪代さんを挟んで立つ。
「「ママー。パパー。いってきます!!」」
この場合、いってきますなのか??
でも二人がそう言うのだから
「「いってらっしゃい」」
八雲さんと二人手を振る。
「ちゃんと雪代さんの言うことを聞いてねー!!」
「「はーーいっ!!」」
「雪代さん、お願いします」
「ああ」
真剣な表情で頷く雪代さん。
固くなってるけど大丈夫かな?
3人が見えなくなるまで見送ったあたし達は、どちらともなく手を繋ぎ歩き出す。
この癖は10代の時から変わらない。
「八雲さん、バイクは?」
「会社の奴に取りに来させる」
「そっか」
「桂が帰って来てるのか」
「おっさすが八雲さん。そう、なんか逃亡者役かなんかで、すっごく痩せてるのっ!!役に差し障りがないよう食べさせなきゃ、倒れちゃう!!」
「そうか。じゃ今日は俺も手伝うかな」
「え!?八雲さん、手伝ってくれるの!?」
「フフン。ハイネより美味く作ったらゴメンな?」
「ハッハー。それはないっ!!」
「「…………」」
そして我らは手を繋いだまま、睨みあいながらスーパーに向かうのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます