第63話
「いい加減、泣き止め」
雪代さんが呆れたように言う。
けどっ。
「うっ!くっ!えっぐ!だって!」
おばあちゃんと別れても、まだあたしは号泣中だった。
だって、あの!雪代さんが、あんな風に思っててくれてたなんて!
これが泣かずにおけようかっ!
……ん?おれようか?
????
「あたしっっバカだしっっ」
「ああ、それは間違いねぇな」
「おぐぅっ」
アレ!?
すんごい真面目な顔で頷く雪代さんの手には傘。
あたしが濡れないように傘をあたしの方に傾けてくれてる。
優しいのだ、相変わらず。
え?何故に雪代さんが傘を持ってくれてるかと?
それは今のあたしは片手に鼻水を拭くティッシュ、片手は雪代さんの服の裾を握りしめて両手が塞がってるからである。
「バカだが、それも引っくるめて自慢だよ。お前達は俺の」
少し前を歩く双子を優しい眼差しで見守りながら、そんな事をまたもや言ってくれるもんだから
「わぁぁぁーんっっ!」
「あっ!バカッッ!」
ちょっと感極まって声が大きくなったよね!
「「ん?まま?」」
子供達がそれを聞きつけ振り向いた。
あら、やだ、あんな声でもわかってくれるのね、我が子達……ぃぃぃぃっ!?
更に更に感動で泣こうとしたら
「あうちっ!!」
めっさ突き飛ばされたよね!
必死の形相の雪代さんに、めっさ突き飛ばされたよね!
「見つかる‼」
必死か!!
あ、必死か。
双子に見つかれば、嫌われるからね……。
そそくさと二人で電柱に隠れる。
「本当にバカだな、お前はっ」
怒られる……。
お?お?
あたし、さっきこの方に自慢の娘って言われたんですけど?
あっでも、バカとも言われてた……。
お陰で涙も引っ込みましたよ、ええ。
すると、それに気付いた雪代さんに再び傘を持たされることに。
そして自分はビデオカメラでまた双子を撮り始める。
あたし<双子である。
「ちがった?」
「ちがったみたい」
違ってませんよー。
「ままのこえにそっくりだったねー」
「ねー」
コクコクと頷きあう二人。
「わかるんだな」
「わかるんですよ」
「ままのさけび、おもしろいよねー」
「はいど、あれすき」
「「………………」」
……叫び??
八千流ちゃん?
ハイドくん?
ちょっ、ママ今、すっごいドヤ顔したのにっ!
ママの声がわかる理由がソレって、どういうこと!?
「叫ぶのか……」
「……たまに?」
稀に?
!?!?
なんか、ジトーって、ジトーって見てくるんですけど!?
え!?
なんですか、その目っ
しょっちゅう、しょっちゅう、あたしが叫んでるとでも!?
それじゃあ、あたしは怪しい人じゃないかっ!
「お前だからな」
「どういう意味ですかっ」
さすがにあたしももう2児の母ですよ?
もうそんなには叫びません、……そんなには。
うん。
「目が泳いでんぞ」
「!?」
「おま……」
「「あるーーーーひっ」」
おおぅ!?
突然、歌い出したよ、我が子達!
んで、その途端、あたしへの追及そっちのけでカメラを回す雪代さん。
ぐっじょぶ!
「「さばんなのなかっっ」」
「ぬ!?」
「……そんな歌詞だったか?」
それはっ!
「「"くろひょう"に~でああた!」」
!!
それ!
竜希さん作詞のやつ!!
森のく○さん、竜希バージョン!!
何故に知ってる!?
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