第61話
「おばあちゃん。こんにちは」
あたしはその声に立ち止まるも雪代さんはビデオカメラを構えたまま進もうとするもんだから……
止めたよね。
服の裾を掴んで止めたよね。
今日のあたし達は"バディ"でしょう?
「あ?」
そう思ってたのはあたしだけのようで……
雪代さんは嫌々……嫌々振り返ってくる。
そんなに……嫌々振り返らなくても……。
雪代さんと二人なんて滅多にないから、ワクワクして、どんな話をしようかと考えてた。
雪代さんは違うんだね……。
少し悲しくて、ちょっと(大分)ムカついて、掴んだ裾をンベシッ!!と放る。
どうせ、どうせ、八千流とハイドの方が可愛いですよっ!!
可愛いけどね!!
うちの子達は世界で一番可愛いけどねーーーーー!!
膨れっ面になっていたんだろうか、雪代さんはあたしの顔を見るとほんの少しだけ口の端を上げて笑った。
!?
今、どこに笑う要素が!?
なんて考えてたら、今度は頭を撫でられる。
!?
男の人にしては細い、でも角ばった指が何度も何度も頭を撫でる。
双子達が生まれて、雪代さんは撫で撫でと良い子良い子を覚えた(双子にするために)
最初は本当に無器用で、荒々しくて、よく"いたいー"と泣かせていた。
その度に困った顔をしてたけど、今やこう、サラッとやってのける。
女の人にしたらイチコロだろう!!
いや、雪代さんの場合、立ってるだけでもイチコロだろう!!
あたしは初めてされましたけどね!!
てか、もう絶対に癖になってる。
"剥れた子には頭撫で撫で"
と、雪代さんの頭の中にはインプットされているに違いない。
あたしは、そんなの効きませ……効きま……
むむむ、不覚にも気持ち良い。
もう少しだけ……
「あらあら、まぁまぁ」
「「!?」」
上がった声に、雪代さんはあたしの頭から急いで手を退け、あたしはおばあちゃんを見る。
「おおおおおおおおおばあちゃん!!」
見られてたぁぁぁぁぁぁぁっっ!!
「なぁに?」
あたしの呼び掛けにコテンと首を傾げるおばあちゃん。
乙女みたいに可愛いその仕草。
伊瀬のおばあちゃん、まだまだ若い。
「仲良しさんね。ハイネちゃん、そちらの御方は?」
慌てふためくあたし達そっちのけで。
ニッコリとおばあちゃんは雪代さんに笑いかけ、あたしに聞いてきた。
雪代さん?
雪代さんは……。
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