第60話

「偉い子達にはご褒美をあげないとねぇ。ハイ、お口を開けて」



「「あー」」



「…………」




なんの疑いもなく、口を開ける二人をハラハラと見つめる人が一人。



いやだから、伊瀬のおばあちゃんは大丈夫ですってば。




しかし、二人ともエサを待つ雛鳥のようだな。



姿はカエルだけど。




「ぐぅぅぅぅぅぅっっ」



「!?雪代さん!?」





突然、雪代さんが呻き出したではないか!



え!?


風邪!?



雨に濡れたから体調が悪くっっ





「俺の孫達……めんこいっっ!!」




………………。



なんだ……具合が悪くなったんじゃない……





めんこいっっ!?




雪代さんの口から、めんこい!?



別の意味であたしも口がパッカーンと開いた。



ハァハァと息遣い荒くカメラを回し続ける雪代さん。




あたしが居なければ、本当に怪しい人だ。



イケメンの怪しい人……。












とことん怪しいな‼




「あ"?」



「にゃにゃにゃにゃんでもございませっっ」





ニョイーーーーンッとホッぺをつねられる。





そんなあたし達が見守ってるとは知らない3人。




伊瀬のおばあちゃんは二人の口に、黒いものを一個ずついれた。




「あれはなんだ!?」




飴か!?


飴じゃねぇのか!?



アイツら、飴食べれるのか!?




グリンっと凄い勢いで、血相を変えてあたしに聞いてくる雪代さん。





「チョコですよ。んで、もう飴も食べれるようになりました」




ああ、そうか。


一回、雪代さんの前で、八千流が飴を喉に詰まらせたことがあったっけ……。





その時の雪代さんの慌てようと、シゲさんの冷静な対応を思い出す。




シゲさん、八千流の背中に平手打ち1発。



ポロっと飴は出たんだけど、シゲさんの一撃が痛かった八千流がギャン泣き……。




そんなシゲさんを、八千流を泣かしたと、ボコボコにする雪代さん。



カオスだったな、あの時。



そして命の恩人なのに、すんません、シゲさん。





「「んん~っっ。おいし~っっ。」」




そう言って双子がニッコリ。




雪代さんのハラハラを尻目に。




「そうか。食べれるようになったか。しかし可愛いな」




どこまでも双子バカの雪代さんがホッと笑う。





あなたも可愛いですよ。





「……あら」



「っっ」





優しい瞳で双子を見守ってたおばあちゃんと目が合う。




少しビックリしたおばあちゃんだったけど、すぐに察してくれて微笑んでくれる。




「おばあちゃん?」



「どしたの?」



「ん?どうもしませんよ。引き留めてごめんなさいね、二人とも。遅くなったらママ達が心配するから、もうお行きなさい」




おばあちゃんが心配する二人の頭を撫で、先を促せば二人はしっかりと頷いた。




「おばあちゃん、チョコありがとぉ」



「また、ままとくるね」





バイバイッと元気に手を振ってまた歩き出すチビカエル達。




「ええ、ええ、待ってますよ。気を付けてね」



「「あいっっ!!」」





ブンブンと見えなくなるまで手を振り続ける二人を一度見送り、さて再び追跡を開始しようとしたその時












「ハイネちゃん」





おばあちゃんに呼ばれた。

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