第十二話:不正の牙城へ! オカマ剣士、腐敗幹部を追い詰める

 翌朝、アルマルスの聖騎士団本部にはひそかな緊張が漂っていた。昨夜、裏取引の書類が奪われたとの報告が駆け巡り、一部の幹部たちが神経質な面持ちで廊下を行き来している。

「領主の男たちが襲われたらしい…」「奴らの計画が漏れれば我々も危ない…」

 小声で囁かれる噂は、焦りと狼狽を隠せない。


 そんな中、ジュンは筋骨隆々の体躯をきらびやかな衣装で包み、まるで舞踏会に赴くかのような余裕をみせながら本部正門をくぐる。その腰には愛剣、手には昨日奪い返した書類をしっかりと隠し持っている。

「さて、今日は騎士団の中枢にご挨拶しに行くわよ。オカマなめんじゃねぇぞ、ゴラ!」

 声には出さず、鼻歌まじりでひそかに呟き、ジュンは石畳を踏みしめる。


 幹部連中が集う重厚な会議室。その前で、先日同様ジュンを怪訝な目で見ていた門番が立ちふさがる。

「ここから先は幹部会議中だ! 勝手に入るな!」

 青筋を立てて制止する門番に、ジュンは艶やかな笑みを浮かべる。

「何よ、その目は。あたし、正々堂々と話があるの。」

 そう言いながら、腕を軽く曲げるだけで袖の下から書類の端をちらりと見せる。門番がそれを見た瞬間、顔色が変わる。

「そ、それは…」

「ふふっ、あたしが手に入れた“面白い書類”よ。もう一度言うけど、通してくれる?」


 門番は渋々と通路を開ける。ジュンが扉を開くと、円卓を囲んだ重厚な甲冑姿の幹部たちがぎょっと振り返る。彼らは昨日聞いた不穏な噂から、このオカマ剣士が何をしようとしているか察したらしい。

「また貴様か、ジュン…!」

「勝手に押し入って何の用だ!」


 ジュンは胸を張り、両手を腰に当てて悠然と微笑む。

「用事は簡単。あなたたちが隠してきた“裏取引”の証拠、ほら、ここにあるのよ。」

 ばさり、と取り出された書類に書かれた不当徴収計画、賄賂の分配表、騎士団内の特定幹部への資金流入の詳細――あまりに露骨な悪事の痕跡がそこに並んでいる。


 幹部たちは青ざめ、怒号を上げる。

「な、なぜそれを…!」

「このオカマ剣士め、何を企んでる!」

 だがジュンは剛健な腕で書類を掲げ、人々が駆けつけてくるのを待つように振りかざす。廊下から若手の騎士たちや下級団員がぞろぞろと集まり始めた。


「聞いてちょうだい、下級騎士の皆さん!この幹部連中は領主と裏で結託して、弱い村人を苦しめ、私腹を肥やしていたのよ。聖なる騎士団を名乗るくせに、やることはヤクザ紛いだなんて、笑わせるわね!」

 ジュンの声が石壁に響き渡る。周囲の若い騎士たちは驚愕と憤怒の表情だ。なかには拳を握り締め、歯ぎしりする者もいる。


 幹部の一人が必死に反論する。

「た、たしかに幾分か私的なやり取りはあったが、これは騎士団運営のための苦渋の選択で…」

「いい加減なことを言うな!」

 ジュンは一蹴するように足元を強く踏み、鍛え上げた身体から漲る気迫を放つ。

「弱い者を踏みにじり、汚い金を懐に入れる。どこが苦渋よ。あたしが苦渋だと思うのは、正義の名を借りて悪をなすこの愚行がもう通用しないってことだけ。」


「くっ…!」

 幹部たちは目を逸らし、動揺を隠せない。若い騎士たちはこの局面を見て、次第にジュンに肩入れし始める。


「こんな腐敗、もう終わらせましょうよ。あんたたちがこのまま逃げ切れると思ってる? あたしは絶対に許さない。」

 ジュンは剣に手を掛ける。その姿に、観衆の間で低いざわめきが走る。

「男でも女でもない最強の存在、それがわたし♡ オカマは人情に厚いの。あたしはこの騎士団を清廉潔白な集団に変えるわ!」

 決め台詞とともに、ジュンは剣をわずかに抜き、その鋭い刃先を幹部たちに見せつける。


 若い騎士が声を上げる。

「やろう、もうこんな連中には従えない! 俺たちで騎士団を変えよう!」

 その声に呼応するように、あちこちで拍手と歓声、怒りを秘めた決意が渦巻く。徐々に幹部たちは追い詰められ、逃げ場を失いつつある。


「オカマなめんじゃねぇぞ、ゴラ!」

 ジュンは拳を振り上げ、腐敗の根を引きずり出す覚悟を高らかに示した。騎士団本部は、揺れるような熱気に包まれ、その熱気は正義による粛清と再生の序曲となるだろう。


 第十二話、ここまで。

 次回、幹部たちとジュンの直接対決がいよいよ始まる! 清廉潔白な騎士団を取り戻すため、オカマ剣士の剣が本領を発揮する。乞うご期待!


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