(雪の日)

高校生活はあっという間だった。


卒業まであと僅かとなった12月—―



クリスマスまであと1週間程の時期。受験生の僕にクリスマスはなかったけれど。


雪がしんしんと降る夜道、駅を出て1人歩いて帰ろうとしたら、目の前に奈美の後姿を見つけた。


今度は自分から声を掛ける。



『奈美、電車同じだったんだ?』


「氷馬くん」



子供の頃、普通に話していた頃が懐かしい。急に話しかけられなくなった時期を経て、僕も少しは進歩しただろうか。


あの時とは違う。きっと、境界線もうまく消せている筈だ。こうしてちゃんと声も掛けられたし。



白くなった地面を踏みしめ、2人の足跡を並ばせながら岐路につく。



『この前ウチのクラスでね……』



聞きたいことは山ほどあるのに、どうでも良い話を振っては繋ぐ。



あと何回、こんな風に一緒に帰れるのかな?


そんな風に思っているとあっという間に家が近づいてくる。



僕は真っすぐ、奈美は左の道。

その分岐点に差し掛かった時に、奈美が立ち止まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る