(ブレーキ音)
駅から少し先の一本道を一人で歩いているとき、後ろのほうから”キイーーッ”というブレーキ音が聞こえる。
「氷馬くん!」
『奈……美?』
なんと、奈美が僕に声を掛けてきた。
慌てて言葉を返す。実は”奈美”と名前を呼ぶのは小学校以来だ。少し躊躇しながら呼んでしまったことが伝わったかも。
「今日は歩きなの?
後ろ、乗ってく?」
後ろ? えーと、2人乗りするってことかな?
コクンと頷きながらYESと返事をしたけど、、、
え?マジか!?
『あ、僕が漕ぐよ
奈美が後ろね?』
とは言返すものの、女子と2人乗りなんて初めての経験だ。
まだ家までは距離がある。
けれどもウダウダ考えたりはしない。やるとなったら潔い方ではあるから。奈美がステップに足をかけたことを確認して勢いよく自転車を漕いだ。
「大丈夫?」
『うん、全然平気』
短く言葉を交わし、ペダルを漕ぎつつも何か共通の話題は無いかと考える。
『中間テスト、近いね』
「うん、高校は難しいよね」
本当は勉強の事なんて聞きたいわけではなかった。何を話したかも詳しくは覚えていないけど。
そんなことより何より、今 奈美が僕の肩に手を置き、つかまっている状況。それが最重要事項。
数分前までは考えられない状況だ。
会話を繋ぎながら、交代でペダルを漕ぎながら、時折笑い合いながら家の近くまで到着した。
思いもよらぬ奈美との2人乗り。
肝心な所には何も触れられなかったけれど。この手は、奈美に触れた。
帰宅して、部屋で僕は自分の気持ちに初めて向かい合えた気がする。
僕は、やっぱり奈美のことが好きなんだ、と。
今更言うのはおかしいかもしれないけど、やっぱり奈美は僕の初恋だったんだ、と。
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