第4話 VTuber――さちはお隣さん
『かわいい女の子と部屋が隣でひょんなことから仲良くなる』という妄想は現実となる可能性を感じた。
なぜなら、お隣は昨日、友達になった
お互いの家の前でばったり遭遇するという思いも寄らない状況にふたりして硬直してしまう。
先に口を開いたのは
「
「みたいだね」
「キモ! ストーカー?」
「いや、俺の方が先に住んでたんだから明らか偶然だろ!」
「着いてこないでよね!」
「無茶言うな!」
昨日の「私達、もう友達だよね?」はどこに行ったんだか。
♡
学校に到着。
俺ら微妙な距離を置いて校内を歩いていく。
教室に入ると
ドラマやら、アイドルやら、漫画やら、アニメやら、の話で盛り上がっているのが大半だ。
「おはよう」
「ええ」
「
「そんな時間あるわけないじゃない」
みんなと仲良くなりたい発言はどこにいったんだ!? ツンケンしてるぞ!
「ごめん。でも、面白いから観てみない?」
「気が向いたらね」
「うん。観てみて」
一応は会話が成立しているのか?
ただよく見てみると、腕と足を組むのは変わっていない。
♡
放課後、文芸部室にて。
「ぷはっ! 緊張した!」
「そんなか?」
「あんな大勢の中にいれば緊張するでしょ」
「……まぁ」
転校生というレッテルによる注目がそうさせているのかもな。
「昨日よりかはうまく立ち振る舞えたと思うんだけど、どうかな?」
「とりあえず、腕や足を組むのやめたらどうだ? 態度悪く見えるぞ」
「ああしてないと落ち着かないのよ」
「そういうもんか?」
「そういうもんなの!」
よくわからないが、貧乏揺すりみたいなものか。
「
「まぁな。締切を考えると手を動かしてる方が落ち着くんだ」
「ふ〜ん。こういう時って話かけない方がいい?」
「気にしなくていいぞ。ながら作業には慣れてるから」
「そう」
話す内容を考えているのか、妙な間が空く。
まじまじと見てくるもんだから恥ずかしい。
そうして
「
「さち、っていうVTuberだ」
俺が執筆を始めるきっかけとなり、人生に彩りを与えてくれた人物。
周りが部活動にのめり込む中、俺は部活はおろか学校にすら馴染めず、友達がいない寂しい生活を送っていた。
そんな時に観ていた配信でのこと。
『『寂しくないの?』こうやって話を聞いてくれるみんながいるから寂しくないよ』
それを聞いた時、俺も同じことを思うようになった。
『さちが配信をして話をしてくれるから寂しくない』
言葉とはこんなにも生きる力を与えてくれるものなんだと知ったから、俺は執筆に勤しんだ。
媒体は違うけれど、俺も同じ様に言葉で生きる力を与えられる人間になりたい。
今の俺がいるのは間違いなく、さちのおかげだ。
俺は
「
「うん。本人だよ。ずっと会いたかった」
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