宵を編む
ススキの色に染まる羊は、
野に咲く紅葉やイチョウを食んで
確かに、静かに
暮れていく
夕焼けに染まっていく
羊の背と首の付け根には、
細かくて見えないポリスチレンのタグ
ゆっくりと引っ張れば、
ゆっくり紡がれる細いウールの糸
ほのかに糸に色があって
紅花のような夕日の色をしていた
巨大な機織り機に、
ウールの糸を張り巡らし
中をシャトルが亜光速で行き来して、
横糸を添えていく
トントンと張られた糸を押さえ、
青が織られていく
夜が織られていく
縦糸は秒速30万キロで上下し、
間を糸が通り抜け、
青は濃紺へと染まり、
夜が流れていく
時折横糸か、縦糸か
はたまた両方かがほどけ
星が生まれた
宵の明星
一等星
衛星
ヒトデやクラゲ
夜の海に放たれた光
光は表面をたゆたいながら、
岸から岸を優雅に、
うらやましくも
川を渡る
布を織るのにも飽きてきて
もう疲れ果ててきて
そんな淀みが布の川に溢れていく
左右にとも、上下にとも、
または彼岸と此岸にとも
うねる
川は、
寝ぼけ眼の中で、銀色に光る
たちまち荒れ狂い波打って、
布の上に大きな波紋を生み出す
(果ては、青い海の波へと変わり)
波は大きなうなりとともに誰かを分かつ
橋を架けずには渡れぬほど
7月6日、あなたの言葉を求めて
川を眺める機織りが
いつもどこかでユメを見ている
はかなきユメは、次第に明ける朝を思い出させる
もう糸が終わりに近づいて
そこにはただ一面の白
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