18.ドキドキわくわくピクニック。美女と馬と時々俺4

 小さくした暗号箱ワードボックスをポーチにしまい、新しい空の暗号箱を代わりに置いた。

 小屋から出て、背伸びをする。

 

「あー、終わった終わった。あとは帰るだけ! と、言いたいところやけど……」

 淡々としているハーミラに、昼飯の事を切り出すのは気が引ける。早く戻りたいだろうと思う。しかし、これだけは譲れない。

 

「……昼食……」

「え!」

 まさか、彼女から切り出してくれるとは! まぁ、あれだけの大物を倒したら、そりゃ腹も減るだろうな。

「食べないの……?」

「食べます! それを言お思てたんやー」

 俺は、ウキウキしながらポーチから弁当箱を取り出した。

 

「さて、どこで食べるか……」

 場所を探そうと見回すと、いつの間にやらハーミラが眠るタルビナリウスのそばに腰を下ろしていた。もちろん、プレィグも従えて。

 

「こっち」

「はやっ! ていうか、そこ!?」

 遠慮がちな小さい手招きに呼ばれ、とりあえず俺も腰を下ろす。タルビナリウスの呼吸音が、なんとも落ち着かない……。

「ま、まぁ……ハーミラさんがええならええけどな……」

 

 気を取り直して、目の前に弁当箱を置いた。2つの大きな箱。一体中身は何だろうか?

 俺としては、馴染みのある弁当と言えば、子供の頃にオカンが作ってくれた物だ。唐揚げ、玉子焼きは欠かせない。昔は甘い玉子焼きが好きだったが、今は出汁巻きも大好きなんだよなぁ。それと、ウィンナー。タコさんにしてあると、特別感があってより嬉しい。

 けれど、この異世界の弁当は見当がつかない。アメリカとかイギリスの弁当って確か……。サンドウィッチにリンゴ! 以上! みたいなイメージなんだけど……。だ、大丈夫だよな!?

 

「わぁ……」

「って、もう開けとるんかーい!」

 俺が悶々と考えてる間に、またしてもいつの間にやらハーミラが2つとも蓋を開けていた。というか、今の「わぁ」という感嘆は、ハーミラが……?

 

「……開ける気配が無かったから」

 見れば、いつもの無表情だ。タルビナリウスの寝息と聞き間違えたのだろうか? それより……。

「すげー! キラッキラや!」

 箱は、メインとおかずの2つに分かれていた。メインは、想像したようにサンドウィッチだ。しかし、色とりどりに何種類もある。

 お楽しみのおかずは、肉や魚、揚げ物と目移りしそうだ。野菜は彩り程度と控えめなところが、さすが「龍の溜まり場」のおやっさん。よく分かってる!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る