大正義

@ss_inter_rep

1話 (1)

――深夜にテレビに流れる番組に、適度な音量のものは1つも無いのではないか。

なるほど、確かにどの層に需要があるのかも分からないテレビショッピングはやけにうるさいし、よくわからない自然を映すだけの番組はやけに静かだ。この国においてはそうかも知らない。だが、それが全てではない。世界というものは、あまりに広大なものであって、我々はその全てを知り得ない、ということは自明の理である。我々の我々の知の限界点の認識の阻止の要求の原因は、知り得ないことを知ることを拒絶することにある。斯様にして我々は世界が無限であることに関して無知になる。但し、言論は必ずしも無限からの逃走を否定するものではない。絶望は、希望への道筋を照らす灯りを落とす。絶望は、無限の可能性への道を閉ざすことである。だが、絶望とはある無限とはまた別の無限への追求でもあるのだ。


「世界には、未だ邪悪なる、帝国が存在します。それは、「全ての自由なる個の大いなる連合体」、すなわち、《連合帝国》です。連合帝国は、その実質的な最高法規たる、連合盟約において、〈全世界の全て自由なる個は、連合に加盟する神聖な永久の権利を保持し、恒久的にその義務を負う。〉、と定めています。この規定に依拠した連合による、多くの戦争は、民族統合統一国の、すなわち、我らの《統一国》の、友邦諸国を、容赦なく蹂躙してきました。それは、自由なる個の自由を、脅かす支配勢力の、破壊を名目として為されましたが、恐ろしいことに、自由なる個であるはずの、民衆に対する数多の、虐殺の、為されたことが、明らかになっています。その中でも悪名高い米無国侵略に参加し、統一国に亡命した、とある元連合帝国軍兵士の告発に、よると、彼らの上官は、かつて、連合帝国内で、拡散した過激派組織〈脱獄派〉を、支持していたそうです…。そう、去年、非倫理で習った通り、脱獄派は、「生からの自由」を標榜し、各国でテロ行為に及び、連合帝国とその同盟諸帝国による、「自由の砦作戦」により、破壊されました。ですが、運動というものは、組織が解体されてもその思想は残留し続けるものです。彼の上官もそうだったように、です。…質問でしょうか。…非倫理の時間は昼寝でもしてましたか?まあ、確かに、生からの自由という思想は、年齢、病、事故、はたまた殺人など…生を自然的なものか、他者かに掌握されることに対する反動でありました。ですが、生からの自由は、生からの自由を信じる者に対して、直ちに死ね、と命じるものでは、ありません。…」

読点が多い。こいつは史学の担任だ。

「…これらから分かる通り、連合帝国は醜悪且つ残酷な侵略主義国家であり、世界史上最悪の国家というわけであり…」

統一国統一政府統一教育局が制定した公教育大綱において規定される、必修九科というものがある。語学、数学、理学、史学の基本五科の他、四副科が存在する。その一つが、非倫理科である。大綱においては、「非倫理科は、連合帝国を始めとする自由の名の下の侵略主義諸国家によって、数々の蛮行が為されたことの根源的原因を侵略主義諸国家における精神的要素から追求し、もって全て統一国民が侵略主義諸国家による悪辣なプロパガンダ戦略に打ち勝つ力を持つこと、そして、侵略主義諸国家の諸国民を正常な思考への転向を実現させるのに十分な知識を、全ての国民が保持する状況を創出ことを目的とする。」とされてる。政府は偉そうに非倫理だのとレッテル貼りをしているが、それを言うなら統一国の史学科は「非歴史科」へと改称しなければならない。異常で、湾曲され、偏執的で、誇大妄想的で、憎悪と欺瞞に満ちたこれが、果たして歴史というものなのか?

最近僕らの中学で流行っているもの、流行っているといってもそれは公然のものでは断じてない。教師に隠れて駄菓子でも食っているのか?駄菓子は一斉検挙されたので違う。そして、そんな低俗なものでもない。これは、かつて本当の意味での《帝国》がこの地に在った頃の、統一主義レジスタンスの活動のように、水面下にあって、極秘裏に、それでいて確固たるもの。統一国最大の反体制運動体〈白軍〉の嚮導者だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大正義 @ss_inter_rep

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ