第18話
「……ルナ。
良かったらこの後……」
今にも唇が触れる距離で
吐息と共に囁く
伯爵が私の腰を、ぐっと引き寄せた時
―――…
「……お嬢様。
こんな場所で何を?」
「!?……」
そうよ、この声。
唯一私をゾクゾクさせる。
「……ネオ。」
「……戻りましょう?
ルナお嬢様。」
唯一…私が
待ち望んでいた声。
月夜に溶け込む
漆黒の髪。
揺らめく炎のような
レッドアイ。
……気品漂う燕尾服が
夜風に揺れる…美少年。
「……なんだ?
使用人が何の用だ。
僕は今ルナと
大事な話をしている。
……早く出ていけ。」
突然音もなく現れた
若い執事に
怪訝そうに眉を寄せる
……名家の伯爵。
彼も、皆が噂するように
ハンサムだったけれど。
……やっぱり。
「……そうよ。
出ていって。」
私が発した冷たい声に
勝ち誇ったように笑う
ピクリと反応した
執事を鼻で笑った伯爵を
「……伯爵?
パーティーは終わりです。」
「っえ……!?」
……一思いに突き放して
まるでそうあることが
当然のように
「……遅いじゃないの。
……ネオ。」
「……申し訳ありません。
お嬢様……。」
私は……漆黒を纏う
執事にひしと抱き付いた。
「……なっ、
待ってくれ……!ルナ」
まさか自分が邪険にされるなんて思っても見なかったのか、情けない声をあげるゲストを
振り返りもせずに
「……夜風に当たって
寒いの。……ネオ?
もっときつく抱き締めて。」
「……はい。お嬢様。」
私を包み込むように
強く抱き締めてくれる。
ネオから放たれる
薔薇のような甘い香りに
私は……もう、満たされていた。
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