第17話
夜会に咲き誇る可憐な花。
誰よりも美しく
誰よりも絢爛に……
だけどけして奢らず
健気で控えめな所作を。
名門貴族ブラウス家に生まれた淑女の当然のたしなみ。
パーティーでは
誰が見たって恥ずかしくないレディーであること。
……それが当然。
だからきっと
「……あぁ、ルナ。
……ルナ……。
なんて美しいんだ。」
「……嫌。
……伯爵……。」
「……こんな場所に
僕を連れ込んだのは
……君だろう?」
「……違うわ。伯爵。
私はただ……」
誰もいない…真夜中のテラス。
すぐ隣の部屋からは
華やかにパーティーを彩るワルツの音色が漏れる。
光に満ちた部屋の影で
純白のサテンドレスの肩口に手をかけながら
「……私、美味しそう?
……それを聞いただけ。」
普段より濃いめのルージュを指先でなぞった。
視線を合わせるまでもなく
……ゴクリ。
目前に立つ、若いセレブの喉が鳴る。
「勿論。
……もちろん、だよ。」
お父様もお母様も
きっと腰を抜かす。
私が……こんな風に
「……誰が見たって
君は美味しそうさ。」
今すぐにでも
食べてしまいたいくらいに。
ぐっと、唐突に腰を引き寄せられて縮まる距離。
触れ合いそうな吐息。
パーティーの裏側で
こんな危険なゲームを
レディーがしているなんて。
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