第4話

 紫織は、突然のことに声を上げそうになる。

 その口を溝口が唇で塞ぐ。


 溝口がソファに白衣を掛けると、紫織を静かに横たえた。

「僕のための看護師になってくれるね?」


 紫織は、跪いている溝口を見ながら、

「私はその言葉を、先生の奥さんになることだと思っていた。

 先生も私のことが好きなんだって。


 でもそれは、ただのカン違い。

 その時、先生は既婚者だったんですもの。


 先生の、冷たくて、長くしなやかな指を見ると、身体が熱くなったものよ。

 先生と過ごした夜を思い出して。


 だからって、もう後戻りは出来ない。

 カン違いしないで、私はもう先生を好きでも何とも無い。


 先生を不名誉な方法で楽にしてあげるだけ。

 私は、先生が逝くのを見届けてから逝きたいわ」

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