第2話

「毎日、楽しかった。

 先生と一緒にいられることが、仕事を覚えるのと同じくらいに。


 ある日の午後、私は自分ではテキパキと仕事をしているつもりだった」



 診察室で、溝口は時折口を歪めながら、紫織の姿を追っていた。

 

 そしてついに、強い口調で、

「君は、患者さんの気に障るような歩き方しか出来ないのか。

 その早口は聴き取りにくい。


 それから、器具の扱いは、慎重かつ丁寧にすること。

 大した仕事も出来ないのだから、少しは協力して欲しい」


「はい、先生。

 申し訳ありません。

 大変申し訳…」

 紫織は、ガックリと肩を落とした。


 先生と一緒にいられることが、幸せだったのに。

 今は、一刻も早くこの場を離れたい。


 重苦しい一日がようやく終わるかと思えば、先輩と夜勤が交代になった。


 早く帰りたいと願ったのに。

 何もかもが、虚しくなる。

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