第3話 深淵への招待

  クリニックに戻った僕は、再びミツキ博士と対面した。しかし今回は、通常の診察室ではなく、彼女の個人的な研究施設へと案内された。その施設は、ビルの地下深くに隠されており、厳重なセキュリティを通過しなければ入ることができなかった。


 「ここは、ECSに関する公式な記録には載っていない場所です。」


 彼女の言葉に、僕は息を呑んだ。




 施設の中には、様々な実験機器やデータ分析装置が並んでいた。その一角に設置された大きなスクリーンには、人々の感情データがリアルタイムで表示されている。


 「ECSの真実を知るには、これを見ていただくしかありません。」


 ミツキ博士はスクリーンを操作し、僕の感情データを表示した。そこには、僕自身が認識していない感情パターンや、異常な干渉の痕跡が記録されていた。


 「あなたの感情は、ECSによって人工的に抑制されています。」


 彼女の言葉が突き刺さる。僕の疲労感や虚無感の原因は、外部からの操作によるものだと断言されたのだ。




 「カイトさん、このままECSの影響下で生き続けるか、それとも抜け出す方法を探すか、選ぶのはあなた次第です。」


 ミツキ博士の目は真剣そのものだった。彼女の言葉に、僕は迷いながらも次第に決意を固めていく。


 「もし抜け出す方法があるのなら、知りたい。」


 その言葉を口にした瞬間、僕は自分の中で何かが解放されるのを感じた。

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