第2話
細い林道をJeepでゆっくりと進む。
地震研究の第一人者、
数日前に巨大な
幸いにも滑落した日下部は、両足の骨折と右手の打撲だけで、命に別状はなかったので携帯電話から自力で救助を要請する事が出来た。
病院で入院中の日下部と面会した際に、森本は日下部の証言を興味深く聞いていたが、ひとつの違和感を覚える。
「日下部さん、確かにあなたの聞いたものは、山鳴りかと思われます。他の数人の登山者からも、情報が寄せられました。しかし不思議な事にその山鳴りの原因が分からないのです。寂地山は活火山ではありませんし、周辺の活断層の動きにも最近、異常はありません。つまり地震の前兆とも異なる可能性があるんです」
ベッド脇のパイプ椅子に座りながら、森本は日下部に話しかけた。
ベッドで上半身だけを起こしていた日下部は、静かに目を閉じて頭を振る。
「私も初めて耳にした音です。数えきれないほどの山を登ってきましたが、あんな音は記憶にありません。とても恐ろしかった。夢で
日下部は話しながら、何度も体を震わせた。
「正直私も山鳴りを実際に聞いた事はありません。しかし科学的に考え、山鳴りには何かしらの原因があるので起こるわけです。山が自然に音を出す事は無いですからね。なので、私はこれから寂地山へ向かいます。現地に行って調査をしてみて、そこで分かる事があるかもしれません」
森本が言うと、日下部は小さく
「お気をつけて。アマチュアの登山家が言う事ではありませんが、あの山鳴りは凄まじいものだ。無理をせず、引き返す時は引き返してください。もしかしたらあの山には、何かが
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