第31話
真っ暗な部屋の中で、スマホが振動する。
もうずっと浅い眠りでしかないから、そんな音ですら目が覚める。
枕元の時計を見たら、夜中の2時を過ぎた頃だった。
電話は遼からだった。
どうしてこんな時間に?
「はい」
「菜々子? 起きてた?」
平日の2時過ぎに電話をかけてきて「起きてた?」て……普通は寝てると思うよ?
「何?」
「手術いつ?」
「……来週の金曜日」
「行くから」
「本当?」
「そばにいる。そのくらいしかできないから」
「うん……」
「もうずっとこっちにいられるの?」
「……当分……帰れないんだ。だからその日だけ」
「そう……」
あんなに腹が立っていたはずなのに、声が聞けて嬉しかった。
そばにいてくれるんだと思ったらほっとした。
「18……って、本当?」
「黙っててごめんなさい」
「18だったんだ……」
「うん」
「そっか」
「怒ってない?」
「どうして?」
「ずっと隠してたから」
「怒ってなんかないよ……」
「こんな時間にどうしたのかと思った」
「こんな時間?」
「2時過ぎだから」
「あ……ごめん。もう寝て」
「ううん、まだ――」
「おやすみ」
唐突に電話は切れてしまったけれど、久しぶりに遼の声が聞けて安心した。
以前と変わらない優しい声だった。
ちゃんと会って話がしたいよ。
夢も見ないで朝まで眠れたのはいつぶりだっただろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます