第26話
どうやって家に帰ったのか覚えていない。
でも、玄関のドアを開けたらすぐにお母さんの声が聞こえて、家に帰ったことを認識した。
「菜々子、帰ったの? ご飯出来てるから、早く食べてしまいなさい」
ご飯?
想像しただけで吐きそうになった。
「食べて帰った」
「連絡くらいしなさいよ。最近、出かけすぎじゃない? いくら大学が決まったからって遊んでばかりいないで――」
「ごめんなさいっ」
お母さんがキッチンから顔を覗かせる前に自分の部屋へ逃げ込んだ。
ベッドに横になって、天井を見つめた。
真っ白の天井を見ているだけなのに涙が止まらなくなった。
昼も夜も同じことばかりを考えている。
遼と何回シた?
一度シてしまうと、その後はタガがはずれたみたいに、会うたびに回数を重ねた。
何回も……
違う。
「何回」なんて数字に意味はない。
でも、遼は「もし万が一子供ができるようなことがあっても絶対に責任とるから」と言っていた。「いつか菜々子と結婚したら」なんて、その時は果てしなく先に思えた話を、わたしを抱きしめたまましてくれた。
「結婚」という二文字が頭に浮かぶ。
まだ18になったばかりで結婚?
遼と一緒にいる未来を想像する。
家族3人での暮らし。
「ずっと一緒にいよう」と言ってくれた。
だから「結婚しよう」と言ってくれるよね?
大丈夫。
遼なら大丈夫。
でも、そうじゃなかったら?
いきなり冷たくなったりしたら?
わたしの前からいなくなったりしたら?
わたしの知ってる遼はそんなことしない。
そんな人じゃない。
どうして連絡してくれないの?
待ってるのに……
肯定と否定を繰り返し続ける。
少し寝てはまた目を覚ましてを繰り返し、長い夜を過ごす。
いつまでこんなことが続くんだろう?
目の下のクマがだんだんと色濃くなっていく。
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