第七章・最後の決意
病院に着くと、柚希は病室のベッドの上で一人、本を読んでいた。久しぶりに見る彼女の姿はどこか小さく見えた。
「……匠?」
俺の姿に気づいた柚希が驚いた表情を浮かべた。
「なんでここに?」
「なんでって、お前が黙ってこんなところにいるからだろ。」
俺はできるだけ冷静な声を出そうとしたが、胸の中の感情が溢れ出しそうだった。
「何も言わずに距離を置くなんて、勝手すぎるだろ。」
柚希は目を伏せ、小さな声で言った。
「だって、匠に迷惑かけたくなかったんだもん。」
「迷惑?バカ言うな。お前がどんな状態でも、俺はお前と一緒にいたいんだよ。」
彼女はしばらく沈黙していたが、やがてぽつりと呟いた。
「……怖かったの。匠に嫌われるのが。」
その言葉に俺は拳を握りしめた。
「俺がお前を嫌うわけないだろ。柚希、お前が何を抱えていようと、俺はお前のそばにいたい。それが迷惑だなんて思ったこと、一度もない。」
彼女は驚いた顔をして俺を見つめた。その瞳からは、抑えていた涙が一筋流れ落ちていた。
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