第八章・春に咲く約束

それから、俺たちは一緒に時間を過ごすことをだ。病院の中でも、外でも。柚希の治療は決して簡単なものではなかったが、彼女の笑顔を見るたびに、俺の心は支えられた。


そして桜が咲き始める頃、柚希が小さな声で言った。


「ねえ、匠。私、絶対に元気になるから。」

「その言葉、信じてるよ。」


彼女は少し笑った後、小さな声で続けた。


「だから、もう一度聞かせてほしいな。あの言葉を。」

「……あの言葉?」


俺が首をかしげると、彼女は少し頬を赤くして言った。


「結婚してくれ、ってやつ。」


思わず笑ってしまった。だけど、その言葉を言うのに迷いはなかった。


「柚希、俺と結婚してくれ。」


彼女は涙を浮かべながらも、笑顔で頷いた。

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