7話 再会

ミラアルクが今自分がどういう立ち位置に冒されているかを進也に聞かされた後、黒い作業服を身につけたいかにも悪そうな男達が来ていた。


男達は半怪物達に指示を出す。



「さぁ貴様ら、今日もアグリー様の為に金を掘り起こせ!! 休む事は許さんぞ!!」



そう言って一人一人にスコップが渡される。半怪物となった者達は、言われるがままに洞窟に入っていき、まるで意思を持たない操り人形の様に土を掘り返し始める。



「おい、ミラアルク!! お前も早く来い」



異様な光景につい気を取られていたミラアルクだが、洞窟の出口から顔を出す進也の声で、我に帰る。とりあえず働かないと、食料が貰えないのは分かった。


だがしかし、二人がここに居ると言うならば、まず二人を探すのが優先だ。ミラアルクは、洞窟に入るなり、すぐにエルザとヴァネッサの姿を探し始める。土を掘り返す手より、二人を探す眼球の方が動いている。


かなり広い洞窟な上、皆散らばっている為探しにくい。


ミラアルクが少し場所を変えようとしたその時だった。



「おいこらそこ! 何をやってる!!!!」



洞窟の中に男の怒声が響き渡る。怪物達は怯えた様子で一斉に男の方を見る。



「お願い!! エルザちゃんに稀血を!!」



ミラアルクも思わず男の方を見ると、男の鋭い視線の先には、かつて共に人体実験の苦しみを乗り越え、共に同じ願いの為に戦い、そしてミラアルクが自身の手を血で汚してまで守りたかった者、ヴァネッサとエルザの姿があった。


だが、ヴァネッサの顔には焦燥が窺い知れ、エルザはぐったりしている。エルザもまたミラアルクと同じく、RHソイル式の稀血を必要とする身体なのだ。


だがそんなヴァネッサとエルザに対し、男は非道であった。



「役立たずが。貴様らは、宮殿行きだ。おい、コイツら連れて行け」


「宮殿行き?」



ヴァネッサがそう問い返すも、数人の黒い作業服の男達が現れ、ヴァネッサとエルザの両腕を拘束し、洞窟の外へ連れて行こうとする。


その様子を見ていたミラアルクが隣に居た進也に焦った様子で問う。



「アイツら、エルザとヴァネッサをどこへ連れて行く気だゼ!?」


「宮殿だ。労働に耐えられなかったり、使い物にならない奴は、宮殿で処分されて、亡骸は俺の妹の栄養分にされる」



進也はヴァネッサとエルザの身に、この後起こるであろう残酷な仕打ちを淡々と話す。だが、最後の言葉にはとてつもない怒気が籠っているのがミラアルクにも分かった。



「何だかよく分からねぇが、そんな事させないゼ!!」



ミラアルクは、スコップを放り投げると、洞窟を出ていく。



「おいっ! ミラアルク!!」



後ろから進也の声が聞こえてくるが、そんな事はどうでもいい。ミラアルクは、ヴァネッサとエルザを連れて行こうとする、男の前に立ちはだかる。



「ミラアルクちゃんっ!!」


「ミラアルクっ!? なぜここに居るであります!?」



エルザとヴァネッサがミラアルクを見るなり、驚いた様子で名前を呼ぶ。



「何だ、知り合いか。構わん、そいつも連れて行け」


「ふざけるんじゃないゼ。誰がお前らなんかに...」



連れて行かれるもんかと言おうとした時だった。首筋に鋭い痛みが走ったかと思うと、ミラアルクはその場にゆっくり倒れる。


薄れていく意識の中でエルザとヴァネッサが何か言っているのが分かる。


(ごめん...ウチ守ってやれなくて)


もう自分の本当の声なのか、それとも心の声なのかも分からない。


ミラアルクの意識は、完全に途絶えた。


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