法的反省と心理的反省(2)

「”余罪”とされた『侮辱罪』については、非常に驚きましたね。何としてでも再犯扱いにするという検察側の悪意と執念を感じました。」


聞けば、魚政書士の男は、以前にもパワーハラスメントの加害者であった女性について「爬虫類のような顔」と書き込んだことで、侮辱罪で略式命令を受けたことがあるという。

このことについては、公にすべきではない表現だったと真摯に反省しているというが、


「反省なく同じ侮辱罪を犯したと言いたいだけなのでしょうが、後から、労働組合の活動として、『〇〇弁護士が、まるでチンピラのようにだらしない恰好で悪態をついていた』『団体交渉などのごまかしが効かない場所には、逃げ回って出てこない〇〇弁護士』と書いたのが『侮辱罪』であるということで追起訴されたんですよ。

しかし、〇〇弁護士は、運営するホームページでもなぜか斜めに座って悪態を付いているかのような写真を自分でアップロードしていますし、団体交渉でも実際に悪態をついていました。

団体交渉そのものも、私以外の組合員がいるか分からないので団体として怪しい、労働組合として認められないというので、東京の労働組合ですから、『他の組合員も出席させますので一度東京に来てもらい、その後は交互開催にしましょう』と申し出ると、今度は『弁護士の事務所近くでなければ団体交渉には応じない』として団交拒否をしていました。

このような態度を、『団体交渉から逃げ回る』と表現することは普通に行われていることなのではないでしょうか。」


という。

実際に、保釈請求に反対する検察の意見書では、この「侮辱罪」を犯したという点で同じ罪を2回犯しており「累犯」にあたるから、権利保釈はできないと主張されたそうだ。


「後で気づきましたが、とても侮辱罪になるとは思えない内容で、とにかく保釈を認めないなどの手段で被疑者を追い詰めたい検察側のストーリーのための追起訴としか思えません。

しかも、公判を聴いて分かったことですが、私の逮捕後に告訴状が提出されており、もともと、それが侮辱罪にあたるとは「被害者」の弁護士すら考えていなかったようなのです。

侮辱罪は親告罪ですから、検察側が容疑を作り、「被害者」に吹き込んで告訴状を提出させたとしか思えません。

人が、自分で考えて、ある行為がある罪に当たるとして告訴をするのは自由ですし正当な権利行使ですが、捜査機関や検察が、ある行為が何でもいいから何かの罪にあたらないかと検討して、あたると考えたら捜査機関や検察が考える「罪」で「被害者」に告訴状の提出を促すというのでは、捜査機関や検察が無料の私的なリーガルチェックサービスと化しており、国家が国民を法の下に平等に取り扱うという憲法の理念に反しています。

こうした立場から、中立公平な立場であるはずの公的機関が特定の人に対する告訴状の提出を促すのはおかしいと思いますから、いずれは、国賠訴訟も起こそうと思っています。」


男は続ける。

「このような私の側の抗弁事由や違法性阻却事由が全て検討された上で、棄却されたのであればともかく、刑事訴訟法に無知であったことと、保釈中の出廷費用という分厚い壁に阻まれ、ほとんど何の主張もできず、何の検討もされないまま、非常にざっくりとした理由で懲役という重大な有罪判決になってしまったことが悔やまれます。

結局、金持ちにしか表現の自由はないのです。

ちなみに、私も、以前関わっていた労働組合で、匿名掲示板で熾烈な誹謗中傷を受けたことがあるのですが、これもよく言われることですが、警視庁は他の県警より忙しいらしく、何度相談に行っても門前払いされ、何度も警察署に足を運んだものの、最終的には被害届を受け付けてもらうのがやっとでした。

刑事裁判は国家の権能であり、法律も全国共通なのに、実質的に東京か地方かで取扱いが異なり、警視庁管内では実質的に罪とされない行為でも、田舎の警察では簡単に犯罪とされることには納得できません。」


そこで、男は、現在も、「被害者」を名乗る元勤務先やその代理人弁護士に対する訴訟や行政審判、懲戒請求の提起を進めているという。


「『被害者』も、結局はデッチ上げに近い内容で警察や刑事裁判を利用しているという自覚があるのか、違法だったというのであれば損害賠償請求訴訟を起こしてくださいと書面で依頼しても訴訟を起こしてきませんし、『被害者』側の言動の矛盾点を指摘して返答を求めても、都合の悪い話になるとダンマリを決め込むんですよね。

結局、こちらから賃金請求や損害賠償請求、債務不存在確認請求の訴訟を起こすなどして、証拠提出がどうしても必要な状況に追い込まないと、反論ひとつ出てこないのです。

警察や検察には嬉々として話をしてあることないことを吹き込むのに、当の本人には何の請求もしてこないし証拠を突きつけてもこないという卑劣な態度なのです。

彼らにとって、警察はまさに『国営セコム』なのでしょう。」


逮捕、勾留によって相当引き延ばしにされることを余儀なくされたが、元勤務先に対する労働基準監督署への申告では是正勧告が下され、個人情報開示請求により「是正勧告書」の控えも手に入れたという”魚政書士”。

弁護士会への懲戒請求は一度は棄却されたが、行政審判と民事訴訟は現在も係属中で、懲戒請求についても最近、新たな事実をつかみ、再度の申立を行ったという。


「元勤務先とパワハラ加害者の”爬虫類”の両者の代理人を務める弁護士に対し、共同不法行為関係にある両者の代理人を同時に務めるのは利益相反ではないかと指摘したんです。

すると、弁護士は、依頼者に受任時に承諾を得ている上、利害対立は顕在化していないから、問題はないと弁明し、綱紀委員会でもそれが認められ懲戒請求は棄却されたのです。

ところが、手に入った証拠を精査したところ、依頼時には利益相反について何ら説明をしておらず、私に指摘されてからあわてて説明を行った電子メールという動かぬ証拠が見つかりました。

つまり、承諾云々や利害対立云々は別として、所属する弁護士会に対し、明らかなウソの弁明をしている証拠が出てきたのです。

こうした行為は、懲戒請求に関する結論とは全く別の問題として、弁護士会の綱紀委員会に対して故意にウソをつくという点で、明らかに弁護士としての品位を欠く問題行動といえます。私ですら、行政書士会の綱紀委員会で調査の対象となったことがありますが、ウソの弁明は一切提出しませんでした。

今回も、結果的には問題なかったと言ってくることでしょうが、店から盗んだ商品を思い直してこっそりと店に戻したとしても、一度でも盗んだという行為自体が免責されないのと同じですよね。」


他方で、最近、問題視していた刑事告訴の供述調書のうちひとつが、行政審判の証拠として被告側の弁護士から提出され、ようやく、その内容を知ったという”魚政書士”。


「ビックリしましたね。また、内容を読んで傷つきました。ここまで悪辣な人物に、事実無根で仕立て上げられていたということがショックで。

供述調書は、”爬虫類”の女性が提出したものだったのですが、元勤務先の指示を受けての内容とは思われるものの、あまりにもひどく私のことを悪し様に罵っていました。

例えば、私が、営業面でも受注を取って活躍するなどしていたところ、これを『まるでお前が社長みたいじゃないか!』と嫉妬した社長により『顧客をやるから辞めろ』と迫られたため、このことを営業先にそのまま説明したことについて、私が、競合他社に案件を無断で持ち出すべく勝手に活動していたと言われていました。

また、そのような事実はないにもかかわらず、勤務中に大量のお菓子を音を立てながら食べていたなど。

しかし、煎餅やじゃがりこといった食べると音が出る菓子は私の好みではなく、勤務中も勤務後も食べていた事実はありません。あえていえば、食べたことがある人は分かると思いますが、地元のスーパーでだけ売っている『ぼうしのみみ』という菓子パンが好きで、毎日7枚も8枚も買い込んで食べていましたが、これはパン状のホットケーキみたいなもので、食べても音はしません。

というか、元勤務先では、まんじゅうなどのお菓子が会社に備え付けてあり、好きなときに食べられるようになっていたのです。

あるいは、元勤務先が福利厚生として自分から提供したお菓子を食べたことを、『お菓子をボリボリと音を立てて食べていて迷惑だった』などと主張することが許されるのでしょうか。完全にマッチポンプであり、デッチ上げです。

こういう身勝手な行動を繰り返す人物だと警察や検察に誤解され、逮捕状を請求されたことは理解できましたが、読めば読むほど、そういったデッチ上げや誇張を行った元勤務先や”爬虫類”が許せないですね。」


ちなみに、取り調べ等の機会で触れた捜査官や検察官の人柄については尊敬しており、職権濫用だとは思わなかったという。


「結局、みんな真面目なんですよ。

私の行為も、パワーハラスメントの加害者を名指しして”爬虫類”と批判した件だけを切り取れば、確かに女性の被害者に執拗な嫌がらせをしていると受け止めることは可能でしょう。

実際に、捜査機関や検察がそのような受け取り方をするよう、供述調書などに多くのウソをちりばめていたことは分かりましたが、第三者からすれば、物的証拠がない以上、どこまでがウソでどこまでが本当か分かりません。

しかし、常識的な人は、捜査機関や公的機関にウソをついて利益を得ようとはしないので、とりあえずは本当のことだと受け止めると思います。

こういう日本人の良識を、刑事事件をデッチ上げる悪意の「被害者」たちは利用しているんです。

警察や検察は、仮に後から事件が不当なものであったと判明しても、特にペナルティはありません。

そこで、「不起訴や無罪になってもいいや、ワンチャン、再逮捕や長期勾留をすれば、自白するんじゃね?」ぐらいの感覚で、簡単にデッチ上げの事件を立件するんです。もはや、『言ったもの勝ち』の状況です。

悪い意味で、みんな、”ただの公務員”なんです。」


(続)

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