法的反省と心理的反省(3)
結局、有罪判決を受けた事件について考えた挙げ句、同じ「反省」でも、法的反省と心理的反省に分けて考えることができるし、そうあるべきだという結論に至ったという”魚政書士”。
「つまり、仮に逮捕状や勾留状、有罪判決を起案した裁判官の誰かひとりだけであったとしても、法曹有資格者により犯罪の嫌疑があると判断されたことは事実であり、そのような行動をとってしまったことについては、法律について不勉強であったと言わざるを得ないですよね。
それは、相手方からどんなにひどいデッチ上げや誇張を受けたとしても、客観的証拠によればひとつも犯罪の嫌疑がないような方法をとることは不可能ではないという考え方からすれば、動かしがたい事実です。
行政書士はあくまでも行政法の専門家であり、法律家ではありませんが、警察の活動も行政活動であることからして、行政書士としての私の不見識は否定しようがありません。
しかし、そもそも、刑事裁判は事件全体の広い経緯のうちごく一部だけを切り取って判断するという構造を採用していますが、仮に、切り取った一部の部分についてだけ考えれば私が悪いとしても、ここまで話してきたとおり、事件全体を検討すれば明らかに相手方が悪いんですよ。
そうであれば、自分の行動に法律的な不備があったという”法的反省”は可能だとしても、心理的には”反省”は不可能です。」
今後について問われると、こう答えた。
「ここまで来た以上、司法試験に進むしかないと思っています。
経験と”反省”を活かして、刑事弁護をやりたいですね。精神障害があるので、接見等を適切にできるか分かりませんが、それでもいいという人からだけ依頼を受けて、準抗告、保釈請求、もちろん無罪を求める弁論と、いわゆる”悪い人”のために活躍したいです。
というのは、留置場の中で知り合ったり、その後、私に逮捕歴があると知って案件を依頼されたりしたことで思ったのですが、いわゆる”悪い人”のほうが、人生経験があったり、個人的に共感できるところがあったりして、関わっていて面白いんですよ。
検察庁の事務官とも話していて盛り上がりましたが、『故意責任の本質とは反規範的人格態度に対する道義的非難である』といいますが、私は、根本的に反規範的な人格態度の持ち主なのでしょうね。
韓国の大統領みたいに、朝憲を紊乱するとか、テロを起こすとかいった器ではありませんが、少なくとも、既存の社会秩序に対して異議を申し立てる態度に共感する立場です。
ある前科者同士の座談会でも、『被害者の立場に立って考えろ』と指摘されましたが、そもそも私は、他人の心情を慮るという機能が無い障害者なのだと思います。
そうであれば、これから先、歳を取って引退するまで、半世紀弱も何もしないということは逆に難しいですから、司法試験に合格して、その後も障害年金や生活保護を受給し続けることを前提として、普通の弁護士は依頼を受けないような依頼者の強烈な心情に基づく事件や『累犯』の刑事事件を引き受けて、それがどんなに不合理なものであったとしても、依頼者の気持ちを代弁して最後の最後まで有利な判断を求めてみたいですね。
こう言うと、被害者の心情云々と批判されるでしょうが、大阪地検の検察官同士の不同意性交事件だけを見ても分かるとおり、刑事事件の”被害者”というのも、例の事件でも民事訴訟を起こすと予告して元検事正から1000万円もの損害賠償金を受け取っていながら、元検事正が逮捕されると、やっぱり被害弁償がなかったと主張して厳罰を求めたいとして、わざわざ民事訴訟の訴状案を送りつけて勝ち取ったはずの1000万円を返金したという報道されている経緯からも分かるように、自分に有利な司法判断を求めて活動する、『事件』というゲームのプレイヤーに過ぎず、神聖な存在でも不可侵の存在でもありません。
こうした存在に過ぎない『犯罪被害者』を、近年の警察や検察、国会が金科玉条のごとく擁護しようとしているのも、もはや危険な傾向だと私は思います。
こうして、警察や検察、世論が”被害者”側に流されやすいことからしても、私は、あくまでも”悪い人”の立場に立って、本人が思いつかないような主張も盛り込んで最後まで弁護できる存在になりたいと強く思いました。」
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