月食明けの太陽

数年前。アイツと私が、一番仲良かった時。

兄妹?姉弟?みたいな間柄だった。

だから、肝心な所でこの関係をぶち壊すのを、躊躇った。


「彼女、いる?」


部活終わりにできたタイミングで、言った。

告白する、つもりだったのに。出てきたのは、びっくりするくらいの遠回りな言葉。

そのせいで、アイツにはっきり、伝わらなかった。答えあぐねて、アイツは

はぐらかした。

...今思うと、彫刻だとか考え始めたの、この時期だった気がする。

意気地なしな自分が嫌いになって。あんな問答の後も、頑張って普通に接してくれた

だろうアイツに申し訳なくなって、距離を置いた。アイツの誤解を、解かないまま。

だからアイツも距離を置き始めたのだろうし、関わりも消し飛んだ。

独善極まる自分が嫌になった。全部、私のせいでしかない。


...今更、贖罪したってどうしようもない気もする、けど。

勇気を出して作ってくれた機会をかなぐり捨てる程、ヤケにはなってない。


「スゥー...

私も、好きだよ。優しくて、気遣い上手で、ちょっと抜けてるけど頼りになる。

大好き!」


体に絡みついた罪悪感と自己嫌悪が、

愛情黄色で派手に塗りつぶされるような、

そんな感覚がした。







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