仮面の裏

俺は何やってんだ?という自問自答を耳にタコができる程繰り返している。

学校でこんな快眠できたのは初めてだが、代償は大きい。

(は〜〜ぁ)

自分に呆れて二の句も継げないまま、猛省中。

理由は明白、遂に見られた彼女の素に共感した。その拍子にポロっと。

仮面が剥がれて気が緩んだ。彼女に何か気の利いた言葉を掛けよう

として、ありきたりな言葉を投げて。珍しく早起きで疲れていたのか、

衝撃で思考が面倒になったのか。俺はそこで思考を投げた。

(眠い...寝るか)となった。

んで、まぁここまではともかくとして、それで気が緩んだのか彼女も寝た。なんで?


「え?何々そんな仲良かったんあいつら」とか

「もしかして寝顔見ようとしていつもより早く...?」とか根も葉もねぇ話が流れ、

〈糾弾?〉の視線が刺さり続けている。顔をあげられない。

「穴があったら入りたい...」

と、いうところで授業開始のチャイムが鳴った。ひとまず助かったようだ。

脇腹に衝撃。彼女が紙を押し付けてきた。

「放課後。」...はい。

...ダメだ、切り替えよう。


深呼吸して。大きな音を立てない様に、強かに。両頬を叩く。

とりあえず荷物を持つ。そしたら部活は適当に理由を付けて、休む連絡を入れる。

合流場所は指定されているので、周囲の視線が失せたタイミングを見計らって

移動した。すでにあの人はいる。そう確信できる。茜色と言うには少々気が早い

空に、綺麗な黒髪と。宝石のように澄んだ、それでいてどこかに、届くモノ全て吸い込む真っ黒な穴が空いている。そんな、不良品の粗雑に彫られた宝石の如き瞳を映えさせて立って居るだろう。その情景を見ようと、最後の一歩を踏み出す時に

走馬灯の様に、記憶が蘇る。

同じ様な時間にしたあの人達家族との会話の記憶。取り留めのない会話の中で、飛び出した一言。

「わかるよその気持ち。」ゾッとした。僕に解らない事他人/家族の気持ちが解るんだ。共感できるんだって。他人の気持ちは言語化して、大雑把に全体を

捉える事が限界と思っていた俺には充分な衝撃だった。母さんは親父や兄さんと

比べると感情的な行動が多い。でも、母さんは人の機微を捉えるのが上手い。

だから、母さんも大雑把に把握して誤魔化してるだけだって思ってた。

思いたかった。自分が特別おかしい共感できない訳じゃないはずだから。

なんて浅ましい。


「ほら、こっち来なよ。」声を掛けられ我に帰った。自身の自己中振りに

押し潰されながら、すごすごと近寄る。声に、抑揚は無い。

「わかってるだろうけど、今朝の私の様子は誰にも言わないで。」

「「お互い広められたく無いでしょう。」」「...わかってるなら別にいいや。」

それなのに、いやそうだからこそ。共感できる。考えが解る。

もし俺なら|嫌な奴には要件が終わったならすぐ失せて欲しい。

そう思ったが、違った。腕を掴まれた。(ほs...暖k...)思考が纏まらなくなり始めた

僕の脳みそに言葉が叩き込まれる。

「...一つ頼み事があるの。」声に、抑揚は無い。...でも何処か、熱が入っている。

一つ、息をしてから彼女が吐き出したその言葉に何が混ざってたかは、イマイチ判然としない。ただ、僕でも確信を持って言える事がある。

「明日からも、今朝みたいに会ってくれない...?いや、会って下さい...。」

それには恥ずかしさと、期待感と。身に覚えのある、どうしようも無いくらい、

切実な。

「...僕でいいなら喜んで。」

助けてくれ、という自分本位な感情が、これでもかってくらいに。

籠っていた。

















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